(27)−「道路公団民営化法案閣議決定」

◎親がかりでは信認は無理だ

 政治主導で、何とも中途半端な「企業」になりそうな気がする。
 政府は日本道路公団など道路関係四公団民営化関連法案を閣議決定した。小泉純一郎内閣の構造改革の大きな柱だ。新会社は将来、株式市場に上場されるが、果たして市場の信認が得られるのか。膨大な借金の返済は容易でない。新会社の自主性は守られるとはいうものの政治・行政の関与の道は残されている。
 関連法案は▽新会社の業務を規定する高速道路会社法案▽道路公団から資産と債務を引き継ぐ日本高速道路保有・債務返済機構法案など四法案でできている。
 高速道路の建設、管理などをする新会社は道路公団を地域別に三分割して全体で六社に分けられ、公団の資産と債務を継承、債務の返済を行う独立行政法人「日本高速道路保有・債務返済機構」を設立する。機構は民営化四十五年後までに債務返済を終え解散することになる。
 そして、新会社の株式は、三分の一以上を政府(地方自治体を含む)が保有し、社長など代表権を持つ役員の選定と事業計画は国土交通相の認可が必要とされた。さらに、新会社の社債に政府の債務保証がつく。
 「民間企業」の性格を占う尺度で見れば、肝心のところで政府の関与を強めたのが特徴だ。出資比率や社債の裏保証は株式上場に向けた配慮だが、事業計画の国土交通相の認可同様、企業経営を制約する要因でもある。
 民間では所要資金の借り入れに際し、経営の健全化という規律が働くのが常識だ。経済同友会の北城恪太郎代表幹事は「経営の規律に悪い影響を与える。仕組み的に好ましくない」とし、保証よりも「規律を持たせる仕組みの構築」が重要と語った。さらに「民営化の目的は、必要のない道路を造らず借金を返済することだ」とも言っている。
 企業経営者からすると、親(国)掛かりの新会社に市場動向に見合った経営が可能なのか疑問が残るということだ。
 昨年暮れ決まった公団民営化の枠組みは、小泉首相の肝いりで発足した「民営化推進委員会」が最終報告で求めた債務(四公団で約四十兆円)の返済を優先するよう求めたが、道路族の抵抗で道路建設を可能とする内容で決着した。
 首相は最終報告を最大限尊重したと胸を張ったが、自民党道路族首脳らは、皮肉まじりではあるが「首相の決意がにじみ出ている」と評価するほど建設推進をにじませた。このため、民営化推進委の田中一昭委員長代理と松田昌士委員が納得できないとして辞任した。田中氏らは、最終報告の意見を引用したといっても、「基本的な枠組みが違う以上、全く違うものだ」と批判してのことだ。
 核心部分で国の関与を許した法案は、小泉改革が所期の目標から外れたことを示した。国交省が手綱さばきができないほど巨大化した道路公団の分割・民営化で、新会社が国交省の権限の下に戻るようでは改革の意味は全くない。(2004年3月7日)