25)−「道路公団問題決着」

◎民営化の趣旨を生かせるか

 道路関係四公団民営化の枠組みは決着したが、小泉純一郎首相の肝いりで発足した道路四公団民営化推進委員会が空中分解するという異例な事態となってしまった。
 昨年暮れ民営化推進委が最終報告をまとめるに当たって、穏健派の今井敬委員長が報告の内容をめぐって辞任、中村英夫委員も今井氏に同調、欠席を続けている。そして今回、田中一昭委員長代理と松田昌士委員が民営化案の基本的枠組みが違うと反発、辞任した。小泉改革実現のための民営化推進委が土壇場で分解してしまったのである。
 今回決まった民営化の枠組みの主な内容は、総額四十兆円に及ぶ四公団の債務と道路資産を持つ「保有・債務返済機構」と道路公団を東日本、中日本、西日本に三分割するなど六つの民営化会社に上下分離、建設コストも当初想定より二・五兆円削減し、採算性で問題のあった五区間百四十三`を「抜本的見直し区間」として一時凍結するというものだ。
 形の上では四公団は心機一転、再出発と思えるが、窮迫する財政の下で高速道建設は、速度は遅めながらも、整備計画は着実に実行されそうだ。四十兆円にもおよぶ債務が返済されるどころか、逆に膨らむ懸念さえある。何のための民営化かと疑われかねない。
 昨年暮れ、民営化推進委がまとめた最終報告は新規建設を凍結、高速道の料金収入を債務返済に充てるよう首相に求めた。
 債務返済を優先させるものだったが、今回の民営化枠組みは料金収入を担保に、自ら資金を集めて新規路線の建設ができるようになった。新会社は新規建設を拒否できるが、それが正当か否かを国交省の社会資本整備審議会が判断、場合によっては建設を勧告さえできる。道路公団が造る整備計画九千三百四十二`のうち未整備区間の約二千`について福田康夫官房長官は全線建設の意向を明確に示している。
 確かに道路規格の見直し、バイパスや既存の国道の活用を求める抜本的見直し区間の導入、国と都道府県による新直轄方式の採用で九兆五千億円のコストを削減、当初の整備費をほぼ半減した。
 コスト縮減は歓迎するが、ではなぜ縮減がこれまでなされなかったのかという新たな疑問も出てくる。社会資本整備の公共投資計画が内需拡大を求める外圧に押されるような形で進められてきたことと無縁ではない。
 また、一般道路や橋りょう建設で浮き彫りになっている補助金行政が、地域の実態と関係なしに進められたこととも共通点を見いだせるだろう。つまり、高速道にしても、一般公共事業にしても不釣り合いな事業がこれまでまかり通ってきたということである。
 公団民営化の熱い戦いは、高速道建設推進派が満足する形で幕を引いた。巨大な道路公団の分割は、国交省の道路行政を強化するだろう。藤井治芳道路公団総裁の解任と、その後の道路族議員との連携に見られる同省の動きがそれを示している。(2003年12月23日)