(24)−「揺れる三位一体改革」

◎頑迷な官庁と族議員

 補助金一兆円削減をめぐる政府、与党のゴタゴタは、小泉純一郎首相の構造改革に対する抵抗をまた浮き彫りにした。
 国から地方への補助金削減は首相の指示どおり決着したが、文部科学、厚生労働、国土交通各省や自民党族議員の動きを見ると、地方分権を真から受け入れているとはとても思えない。補助金削減に伴う地方への税源移譲も四千二百億円程度になるが、これとて所得税や住民税など基幹税の移譲ではなく、たばこ税で行う。地方交付税も減る。地方自治体にとっては、有り難みのない「三位一体改革」となった。
 小泉首相が来年度に一兆円の補助金を削減、併せて税源移譲も行うと指示したのは十一月十八日の経済財政諮問会議の席上だ。このころは、霞が関が来年度予算編成の具体的な政府案づくりに入っている時期である。
 首相がこの時期に官僚の常識を超える指示を出したのは、補助金削減や税源移譲に対する霞が関の「サボタージュ」(政府筋)に業を煮やしたからだ。全国知事会など地方六団体の税財政改革を求める攻勢もある。マニフェスト(政権公約)選挙となった先の衆院選では、補助金で民主党が十八兆円の削減を掲げたし、全国知事会も九兆円の廃止を迫っている。三位一体改革の「四兆円」はいかにも見劣りがする。
 この小泉改革が省庁や族議員の抵抗でさらに減速するようでは、指導者としての資質さえ問われかねない。
 今月一日開かれた全国都道府県知事会議で首相は生活保護の見直しで集中砲火を浴びた。厚労省は生活保護費の国庫負担率を引き下げる案を提示していたことへの地方の猛反発だ。
 生活保護費は支給基準が決まっており、補助率が下がれば、その分地方の負担が増える。文科省の教職員の退職手当・児童手当とともに地方が最も嫌う「付け回し」の典型だからだ。
 首相は「一兆円削減」に続いて、十一月下旬の閣僚懇談会で「役所の言い分を真に受けず、主導権を発揮してほしい」と各閣僚に指示している。小泉改革が不透明になったり、指導力が問われるようなことにでもなれば、来年の参院選に向けて首相の存在感も弱まる。
 先の衆院選で首相は「改革の芽はできた。これを大きく育てる」と約束した。来年度予算で明確になる三位一体改革は、その第一段階と言える。 首相は確かに指導力をアピールした。省庁よりも地方に配慮したことも事実だ。最大の補助金である文科省の義務教育費負担金は二兆八千億円に上る。うち教職員の退職手当・児童手当二千三百億円を削減することになったが、地方の反発に配慮して「基幹税移譲予定交付金」(仮称)を創設してバランスをとった。
 補助金の一兆円削減は形の上ではできたが、「数字のつじつま合わせ」と知事らの批判は多い。税源移譲と自治体間の財源調整をどうする。三位一体改革を評価するのは早すぎる。(2003年12月14日)