(22)−「地方制度調査会の最終答申」

◎本格的な変革期を迎えた

 地方制度調査会の「今後の地方自治制度のあり方について」の最終答申が小泉純一郎首相に提出された。
 最終答申は、市町村合併で焦点となっていた合併を促す規模の目安を「おおむね人口一万人未満」とし、現行の合併特例法の期限が切れた後は都道府県が市町村合併の枠組みを示す構想をまとめることにした。
 また、合併が周辺地域の衰退を招くとした不安に配慮し、基礎的自治体の中に「地域自治組織」を置くことできるとした。自治組織はどの自治体でも設置できる一般制度にするが、合併に際しては合併後一定期間、旧市町村を単位とする法人格を持つ特別地方公共団体とするのが適当だとした。
 だが、自治体の規模の目安となる「一万人未満」がどの程度の拘束力を持つか。また、各地の合併協議会が難航していることをみると、最終答申が通常国会に提出される現行の合併特例法に代わる新法にすんなり盛り込まれる疑問だ。
 「一万人」についても、仮に新法に盛り込まれれば、小規模自治体が最も懸念する「強制合併」と受け取られかねず反発は避けれない。来年の参院選を控えた政治状況を考えても答申どおりになるとは考えにくい。
 市町村合併を政府に代わって進めなければならない都道府県の立場も微妙だ。都道府県は現行法の期限切れとなる〇五年三月以降の新法で合併市町村の枠組みを示す構想をつくり、合併のあっせん、指導、場合によっては介入さえ求められる。
 合併に反対する自治体は、政府に代わって都道府県が出てくることに疑問を突き付けることも予想される。都道府県の中には、自ら合併をあっせんすることに消極的だったり、反対のところも十分予想される。つまり、都道府県知事の役割が期待されながら、その責任を果たせない場合はどうするのか。
 さらに答申は、小規模自治体の業務や権限の一部を都道府県に肩代わりさせることを引き続き検討するとしたこともすんなり受け入れられるとは思えない。
 特例法に続く新法も形式上は自主的合併を追求することには変わりはない。国の役割を都道府県に移すことは、国と地方の綱引きが都道府県と市町村に代わるだけだ。
 調査会に求められた基礎的自治体の在り方は、簡単に言えば、地方の多様性を保ちつつ、行政の効率化をいかに実現するかである。その回答が人口規模では「一万人」、地域の自主性を配慮した「地域自治組織」そして都道府県の責務の拡大。市町村の自主的合併を促そうという政府の方針は、最終答申で一層固められたと言っていい。
 合併協議会の相次ぐ破たんといった最近の状況が、最終答申で急転回し合併の機運をもたらすことにつながるかは即断できない。そして、市町村合併の後にくる都道府県合併、さらに中長期的な道州制の導入。わが国の地方制度は本格的な変革期を迎えたのである。(2003年11月15日)