S−「総選挙と地方制度改革」

◎あだ花で終わらせるな

 総選挙を目前に、地方制度の抜本的改革を求める動きが急だ。
 全国知事会など地方六団体や岩手、宮城、鳥取など改革派知事らによる補助金廃止、税財源の地方移譲の具体的提言が相次いで出されているだけではない。市町村レベルでも首長による会議やシンポジウムが全国各地で開かれ、補助金削減や税源移譲を求める決議や市町村合併をめぐる論議が盛んだ。十一月には地方制度調査会も、今後の地方自治制度の在り方で最終報告をまとめる。
 この時期に地方制度改革を求める論議が高まっているのは、総選挙で与野党とも地方分権問題をマニフェスト(政権公約)の柱に位置付けているからだ。
 小泉純一郎首相の三位一体改革で補助金の四兆円削減や税財源の地方への移譲、地方交付税見直しが示されたが、具体的な改革は年末の来年度予算編成に先送りされている。自民党の政権公約にも具体性はない。
 これに対して民主党の政権公約は、国の補助金のうち十八兆円分を廃止することをうたうなど、思いきった税財政改革を打ち出している。こんな状況は、地方自治体にとって「千載一遇」のチャンスだ。腰を据えて税財政改革を迫るのも当然だ。
 地方自治体の最近の動きを見ると、八月下旬、岩手県など六県知事らが約九兆円の補助金廃止を求める提言を発表。今月には全国知事会の梶原拓会長(岐阜県知事)が総額九兆―十兆円の補助金を廃止、うち八兆―九兆円の税源移譲を求めるを提言を公表した。
 梶原会長の提言は、従来全会一致を原則とした全国知事会のルールを変え、多数意見を会長の私案の形で示したものだ。
 また横浜市の中田宏市長は今月、政令指定都市の代表として麻生太郎総務相に会い、八兆円の補助金廃止と税源移譲を柱とした提言書を手渡している。さらに構造改革特区で町づくりを目指す埼玉県志木市の穂坂邦夫市長ら三十一市町村長も、十一兆円を超える補助金の使途を決める権限を市町村に移譲するよう求める共同提言をまとめた。
 一方、政党に対する直談判もあった。
 全国知事会が今月、自民党と民主党と行った意見交換がそれだ。自民党との話し合いでは二〇〇六年度までに約四兆円の補助金を廃止・縮減するとした公約について「どんな項目を廃止し税源移譲は何の税目になるのか」などを問うている。民主党とは、補助金廃止で仕事がなくなる官僚の処遇や一括交付金の配分基準をどうするかなど、同党の大胆な地方税財政改革に対する質問が出されている。
 ところが、自民党も民主党も明快に各県知事らの疑問、質問に答える材料を持ち合わせていない。知事会は政権公約評価研究会で各党の公約を分析、公示日の前にも公表する段取りだという。
 地方税財政改革が今回の総選挙を機に進むのか、あるいは選挙時だけのあだ花で終わるのか。間もなく答えが出る。(2003年10月18日)