R−「道路公団総裁更迭」

◎次ぎは真の民営化を急げ

 日本道路公団の藤井治芳総裁が更迭された。
 民営化を控えた道路公団の財務諸表をめぐる混乱を招いた藤井氏に公団の経営は任せられない、と石原伸晃国土交通相が最終的に判断、小泉純一郎首相も了承した。道路四公団の民営化は、小泉第二次改造内閣の大きな目玉である。表向き民営化に賛成しながら、内部では逆なことを言う。批判が強い財務の実態も隠ぺいするような総裁が更迭されたのは当然だろう。
 更迭のきっかけとなったのは今年七月、道路公団の幹部が公団の債務超過を示す「財務諸表」を藤井総裁が隠ぺいしていたとする疑惑を月刊誌で告発したことだ。総裁は疑惑究明を求める国会答弁などで否定したが、公団の調査で財務調査の事実が確認された。さらに総裁の答弁もこの間、二転三転して問題化し、道路四公団改革の民営化推進委員会も藤井氏の更迭を要求していた。
 行革担当相から国交相になった石原氏は、先月二十二日の新内閣発足後の会見で「(藤井総裁は)民間企業ならクビだ」と切り捨て、国民から信頼される経営陣の下で民営化が進められなければならないと語っている。自民党総裁選で政局が揺れていたこともあるが、藤井総裁の更迭は時間の問題だった。
 新内閣発足で政局を乗り越えた小泉首相にとって、郵政事業の民営化と並んでマニフェスト(政権公約)の柱となる道路公団民営化を、国民により印象づける意味でも総裁更迭は必要だった。加えて、国会解散も迫っている事情もあった。
 「藤井総裁は道路を造り続けるためにいる」と国交省筋は語っていた。藤井氏は一九六二年、旧建設省に入省、道路畑を中心に歩み、事務次官を経て二〇〇〇年に道路公団総裁となった。
 五日の日曜日昼前から国土交通省で行われた、石原国交相の藤井総裁に対する事情聴取は、予定をはるかに超える五時間近くに及んだ。石原氏は公団の不明朗な財務内容や国会答弁の混乱をただし、藤井氏も分厚い資料を示して説明したが、石原氏が抱いていた疑念を払しょくできなかった。
 事情聴取後、藤井氏は「(公団の)民営化は必要だ。私は何も悪いことをしていない。私が辞めて改革が後ろ向きになる」と強気な態度を崩さなかった。藤井氏は問題発覚後も「改革者だ」と言い続けていた。その気持ちは変わらないという。
 本人の言い分はともかく、藤井総裁の更迭で公団に巣くっている隠ぺい体質がどう改善されるのか。急がれる後任の総裁人事は難航しているようだし、政府が来年の通常国会に提出する民営化関連法案の内容がどんなものになるかも注目したい。
 法案は国主導の高速道路建設を主張する国交省の仕事だ。自民党道路族の攻勢も避けられない。石原国交相は、高速道建設について国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の意向を尊重する考えだ。総裁更迭の次は公団の真の民営化実現が課題である。(2003年10月6日)