I−「骨太方針第3弾」

◎本番は暮れの予算編成だ

 地方が納得する地方税財政改革はできるのか。
 政府の骨太方針第三弾の焦点だった三位一体改革は、補助金を二〇〇六年度までに概ね四兆円削減する、その見返りとなる税源移譲では、所得税などの基幹税を基本とし地方に義務付けている事業の全額を、それ以外は八割程度を移譲することで決着した。もめにもめた片山虎之助総務相と塩川正十郎財務相の税源移譲と補助金削減の対立は、最終的に小泉純一郎首相の裁定で幕を引いた。
 地方分権が本格的に論議されて七年。分権の根幹となる国から地方への補助金の廃止・縮減、税財源移譲問題はようやく緒についたのである。
 地方自治体も程度の差はあるが、ほぼ前向きな評価を下している。それでは問題はないかと言えば、「大いにあり」だ。
 実質的な分権に向けて大きく踏み出したことは事実だが、骨太方針に基づいて着実に歩を進めることができるか不透明さがあるからだ。例えば補助金の削減は、具体的に何を対象にするかは年末の来年度予算編成を待たなければはっきりしない。公共事業に対する補助金も対象とされたが、事業官庁の国土交通省や農水省は、必ずしも納得していない。義務教育費国庫負担の文部科学省や厚生労働省も同様だ。
 財務省幹部が「極めて難しい」と言うのも、補助金の後ろに官庁のみならず、関係業界や族議員が強力な抵抗勢力として待ち構えているからだ。
 三位一体改革のもう一つの柱である地方交付税の見直しは、首相指示の形で矛を収めた。三つの改革の今後は、いずれも首相がどんな指導力を発揮するかにかかったのである。
 旧建設官僚OBで岩手県知事の増田寛也氏が今後を懸念するのは、補助金の持つ「力」を十分承知しているからだ。
 補助金総額は本年度予算で約二十二兆円だ。うち八割近くの約十七兆円が自治体向け。中央省庁が地方を思いのままにコントロールし、政治家にとっても利権構造を保持する有力な手段が、この補助金だ。
 今なぜ地方財政改革か。
 経済が順調に伸びている時代は、国が後で地方交付税で面倒を見てくれる安心感があった。補助金も国の基準に従っていれば地方の持ち出しは最小限に押さえることができた。この構図が国の景気対策にも使われてきた。地方は自主的な政策選択の欠如を招くことに気付きながら、安易な道を歩んできたのが実態だ。地方の責任も重い。
 三位一体改革をめぐっては首相の諮問機関である地方分権改革推進会議、地方制度調査会、そして経済財政諮問会議の三つの機関が三つどもえの争いを演じた。分権会議は内ゲバ状態だった。
 税源移譲に消極的だった分権会議の意見書は骨太方針から外された。地方全体を敵に回す恐れがあったからだ。
 首相は「大きな一歩を踏み出した」と自賛した。揺れる政局をにらみながら、首相はどんな手を打つのだろう。(2003年6月28日)