B−「助役・収入役の廃止」

◎改革の苦痛を評価する

 「助役」「収入役」という首長を支える市町村行政の重要ポストが、三重県大王町と沖縄県嘉手納町で四月からなくなった。大王町議会は今月十日廃止条例を議決しており、嘉手納町も三月議会で議決した。
 助役・収入役は地方自治法で設置が決められているが、自治体の事情に合わせて条例で廃止できる。だが実際にこの二つのポストを同時に廃止するのは全国的に例がない。両町の試みは、地方行革が自治体の中枢まで及んでいることを表している。変革を期待する住民にも評価されるだろう。
 大王町の廃止は、今年一月の町長選で初当選した野名澄代町長が公約、実施した。「絵かきの町」として知られる同町は、黒潮に洗われる人口九千人に満たない町である。一方の嘉手納町は町の八三%を極東最大の米空軍嘉手納基地が占める。
 嘉手納町の宮城篤実町長は「分権型社会に求められる自己決定、自己責任を果たしながら行財政の効率的運用を図っていかなければならない。改革には自ら重い負担と苦痛を伴うことを覚悟している」と廃止の理由を話している。
 大王町も廃止理由は嘉手納町と同じだ。助役と収入役がいなくなれば、その分町長の仕事も増える。部課長の責任も重くなるが、その効果も期待できる。
 全国の自治体が直面する問題は、国の緊縮財政による公共事業費の削減、地方交付税の減額が現実のものとなっていることである。それ故、地方行革は待ったなしだ。
 全国町村会によると、助役を廃止したのは十二町村、収入役をなくしたのは百九十七町村に上る(二〇〇二年四月現在)。地区別では北海道、鳥取、岡山、広島の四道県が多い。すう勢としては、廃止自治体が増えてきているという。
 総務省はこうした動きを「自治体が自らの規模に見合った体制を追求し始めた」と好感している。
 財政健全化の動きは、例えば県レベルでは、岩手県が公共事業を二年間で三割減らし、教育や環境に重点配分する。「脱ダム」の長野県は、新年度から三年間、職員給与を5―10%削減する。また政令指定都市の神戸市は四月から市長の月給を20%減らすのに加えて、退職金制度も見直し、市長、助役で20%減額することを決めている。
 今年三月末の地方自治体の借入金は全体で百九十五兆円、一年後には二百兆円にも膨らむ見通しだ。地方税収の落ち込み、減税による減収、景気対策のための地方債増発の急増による。新年度の政府予算(一般会計)の約二・四倍の赤字であり、大半の首長が地方財政の厳しさを訴え、将来はさらに悪化する考えているのも当然だろう。
 市町村合併問題に揺れる今日、特に小規模の在りようが問われている。その意味では、大王町や嘉手納町の試みは新たな挑戦と言っていい。自らのぜい肉をそぎ、力強く特色のある自治体こそが分権時代に求められているのである。(2003年3月13日)