E−「地方制度調査会の中間報告」

◎平成の大合併はできるのか

 政府の地方制度調査会(首相の諮問機関)の中間報告がまとまった。
 中間報告は基礎的自治体、大都市、都道府県それぞれが今後どんな姿になるべきかの三項目について見解を示した。しかし、ポイントは「基礎的自治体の在り方」、言い換えれば分権時代にふさわしい基礎的自治体をどう構築するかである。明治、昭和の大合併に次ぐ「平成の大合併」を、効率よく実現させるかが最大の焦点だった。
 その処方せんが、合併特例法期限切れの二〇〇五年三月末以降も新しい法律で自主的な合併を促すことであり、加えて合併前の旧市町村が地域自治組織を設けることができる「包括的な基礎的自治体」を提唱したことだ。
 地域自治組織には旧市町村の名称を残すことも可能になる。旧市町村に一定の自治権を認める地域自治組織としては「行政区的なタイプ」と「特別地方公共団体とするタイプ」の二つの仕組みが提示された。前者は政令指定都市で導入しているような法人格を持たないもの。後者は法人格があって、組織の長を議会形式の議決機関メンバーで互選する広域連合の形をとる。ただし、課税権や地方債発行権限はない。
 「合併で地域特性が失われ、逆に地域の過疎化が進む」とか「強制的な合併は分権時代に逆行」などとした地方の抵抗・懸念に配慮したのである。
 とはいえ、合併の難問がこれで解消するわけではない。そこで重責を担わされそうなのが都道府県知事だろう。〇五年三月末までに合併の見通しが立たない自治体に対する知事の「勧告」を明示したからだ。
 知事は地理的条件や財政的条件などで合併できない市町村の申請を真正面から受け止めなければならない。場合によっては「悪役」も覚悟しなければならない。
 合併問題が大きな争点になった四月の統一地方選で、有権者は「まだら模様」の結論を出した。合併に対する不信感がぬぐえなかったからだ。
 ところで、中間報告は肝心の基礎的自治体の「人口規模」に具体的に触れることを避けた。昨年十一月公表された地方制度調査会の西尾勝副会長の私案は「最低一万人規模」を強くにじませ、全国町村会の猛反発を招いた。「一万人」とされた最低ラインは自民党の考えでもある。
 だが、地方のあまりの反発に驚いた自民党の注文で、中間報告は当初予定した統一選前の「三月中」の取りまとめを選挙後に先送りした。政治のご都合主義がそうさせた。
 人口規模「一万人」は、地方制度調査会の論議でも「正論」とされながら結局は、法律上、人口規模の要件を示すかどうかは賛成、反対の両論併記となった。問題の先送りである。
 理想を言えば、税財源に手を付けた上で合併論を進めるべきだったが、現状は逆だ。小泉首相は「(三位一体改革は)まず税財源移譲からやる」と言った。忘れないでほしい。合併ありきでは、地方は納得しない。(2003年4月13日)