M−「人事院勧告」

◎人勧も改革の担い手に

 公務員の給与は高すぎるのではないか。デフレ脱出のめどもなく、企業倒産、失業が政治問題になっている今、こんな声が街にあふれている。雇用不安もない公務員へのやっかみからだけではない。公務員制度そのものが時代にそぐわなくなっているからだろう。
 人事院がこのほど国会と内閣に提出した本年度の国家公務員一般職の給与改定に関する勧告は、そんな声を多分に意識した内容となった。年間平均給与(四十一歳平均)を2・6%、十六万三千円引き下げるというものだ。勧告どおり実施されると平均給与は六百十五万三千円となる。
 月給は二年連続、年収は五年続けてのダウン、下げ幅は過去最大となる。人事院は厳しい勧告になったと言うが、経済の現状を考えると当然の内容で、政府は勧告どおり実施すべきだろう。
 経済が右肩上がりの成長を続けていた時代は、公務員の給与は民間の後を追うような形で、目立つことはなかった。だが一方で、公務員が受ける調整手当など国独特の特例的な手当や年功的給与、高額の退職金が問題になっていた。
 公務員給与をめぐる世間の批判を受けて、人事院が有識者による研究会を発足させたのは昨年秋。この研究会が先月まとめた報告は、現行制度を抜本的に見直すよう提言している。
 例えば「ワンタッチ受給」だ。物価が高い都市部勤務者に支給される調整手当(最高で俸給の12%)が地方転勤後も激変緩和の名目で支給される異動保障の一つだが、その是正や公務員の職責を反映させた給与構造の見直しなどを求めている。異動保障は四十八万人の国家公務員の約六万人が受けているという。ワンタッチ受給は、ごく短期間の在籍でも適用され、約百人いる。
 また、人勧は民間の実態に準拠する手法を採用しているが、現行の企業規模百人や事業所規模五十人とした対象が、現状に見合ってはいない。
 勧告は悪評高いワンタッチ受給防止のため、六カ月を超える在勤が必要とし、異動保障期間も現行の三年から二年に短縮、支給率を80%に下げた。
 勧告どおり実施されると、国家公務員一般職で二千三百十億円が節減される。昨年の人勧実施で二千四百十億円が節約されており、国庫はそのだけ合理化された。人勧に伴い地方公務員の給与も引き下げられるが、昨年の地方財源の節減額は四千五百二十億円、今年は四千三百八十億円の財源が浮く計算になる。
 国家公務員の年間給与(平均)は、一九九八年度がピークで六百四十二万三千円だった。五年連続の給与カットは痛いかもしれないが、公務員が依然として民間よりも恵まれている事実に変わりはない。公務員だけが社会からかけ離れて存在することは許されない。
 三位一体改革を持ち出すまでもなく国と地方の改革は急務だ。人勧も改革の担い手となるべきではないか。賃金制度が変革期を迎えている民間の知恵を導入するときである。(03年8月12日)