@−「道路公団民営化の最終報告」

◎国の在り方こそ問われる

 何とも後味の悪い結末になったものだ。
 政府の道路関係四公団民営化推進委員会の最終報告のことだ。新規の高速道路建設に積極的な二委員と慎重な五委員の調整がつかず、報告の最終期限日になって積極派の今井敬委員長が突如辞任・退席してしまった。まとめ役を欠いたまま小泉純一郎首相に提出された最終報告が日の目をみるかどうかは首相に任された。
 最終報告のポイントは@十年後をめどに民営化会社が「保有・債務返済機構」から高速道路を買い取り、株式上場するA民営化と同時に通行料金を平均一割引き下げるB既存路線の通行料に依存した高速道建設は認めないC赤字は四十年の元利均等返済D四公団は東日本、中日本、西日本など五地域に分割―である。
 政府は二〇〇四年の通常国会に、この最終報告に基づく民営化関連法案を提出する方針で、法案審議が順調に進めば〇五年に新会社が発足する。
 だが自民党道路族の反発が一段と強まっていることをみると、今後の法案審議は全く不透明だ。改革路線がまたまた変更されるのか、小泉首相はまさに正念場であろう。
 高速道路は国の整備計画九千三百四十二`のうち約二千三百`が未完成。その建設費は約二十兆円とされたが、車線縮小など道路規格を変更することで約十六兆円に削減ができる見通しが立っている。しかし、四公団の累積債務は約四十兆円にのぼる。
 この膨大な債務処理と未完成部分の取り扱いをどうするかが、委員会に課せられたテーマだった。委員会は、新規路線は不採算路線が多く、道路族が主張する通行料金依存では従来と何ら変わりはないと否定、全体の債務返済や通行料金の引き下げを優先させた。
 また「五十年以内」と閣議決定した公団の債務返済期間を「四十年」としたことで建設投資可能額は年間六百十四億円となる。現在の約九千億円の一割に満たない。着実な高速道建設を狙う国や地方自治体にとって、最終報告は容認できない内容だった。
 だが最終報告は、高速道路はすべて駄目とは言ってはいない。優先順位はどうか、国と地方がカネ(税金)を出し合って造るか、そして採算性の範囲で民営化会社が建設に参加できないわけではない。その方策も示している。
 一九七〇年代初めから全国的な高速交通ネットワークの整備が本格化した。その先兵とが新幹線であり、高速道路である。だが、この高速ネットは一方で東京への一極集中、地方大都市への物的・人的集中を加速させ、地域の過疎化を一層深刻にした。政策の間違いがもたらしたのである。
 全国に張り巡らす高速道路建設をどうするかは、ある意味ではこの国の在り方を占う重要な課題だ。分権時代のいま問われるのは、盤石な地方だ。国と地方の関係を改めて見直さなければ、むなしい対立だけが続いてしまう。(2002年12月7日)