【地球温暖化と沖縄観光】

 「さんご礁の海」「癒しの島」などが売り物の沖縄観光に、何とも嫌な未来予想図が国連の機関から出された。
 ブリュッセルで開かれていた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、2007年4月6日択した人間の活動が原因の地球温暖化に関する第4次評価報告書のことだ。
 シュミレーションの詳細は省略するが、気温上昇で将来、「水不足」「さんご礁の白化・絶滅」「海面上昇」などの現象が避けられないという。亜熱帯地域の魅力を地域活性化の観光産業に託す沖縄にとっては見過ごすことができない由々しき問題なのである。
 それだけにとどまらない。「生態系の激変」「洪水・暴風雨の頻発」「海岸線の侵食・水没」が現実の問題となって現れるという。
 地球という小さな惑星が、危機的な状況に向かって突き進んでいることに警鐘をならしているのがIPCCの報告書だ。観光振興に邁進する沖縄は、よくよく考えなければならないと思う。
 
 先日、沖縄21世紀戦略フォーラム(天妃ドットコム)のメールマガジン(No280)に「沖縄観光の2011年危機」が載っていた。
 予定される大型リゾートホテルの完成に伴う供給過剰をどうするのか。独り歩きした右肩上がりの観光客の増加に対応したインフラ整備ができなかった、いやしなかったことへの怒りがこもっている。
 率直に言って観光産業の中期的見通しに対する懸念は、霞が関の沖縄担当者の腹のうちにあることと同じだ。
 控えめであろうが、積極的であろうが、沖縄の「能動的な見通し」に霞が関は正面きって首を振ることはない。「カネ目の話」につながるようだと財政事情が厳しく右から左とは行かないが、予測・見通しの類では、「ああそうですか。頑張ってください」が本音である。
 それは、常識的に見て予測の範囲にあること、そして、沖縄の「やる気」を期待する政府の気持ちの表れでもある。

 だが、冷静に足元を見てもらいたい。
 限られたインフラの中で機械的に弾き出した楽観的な「成長」が可能か、ということだ。
 沖縄観光の最大の魅力は、青いさんご礁に囲まれた海である。そのさんご礁が、このままでは危機的状況を避けられないとIPCCのシュミレーションは地球的規模で警告している。
 繁忙期における観光客の収容能力が限界にきていることは確かだ。そして、沖縄観光自体が通年化している。だから、気合をこめて大型ホテルの増設が必要だということだろう。
 観光産業は裾野が広い。沖縄経済は、財政支援が注ぎ込まれながら地場産業の自立がいまだに道半ば。故に、観光産業に「機関車役」を期待し、求めるのも理解できる。
 しかし、目白押しのホテル建設等に伴う観光インフラの整備は、「水」「ごみ」「環境汚染」問題を深刻化させかねない。すでに問題は顕在化しているが、それが沖縄経済の前に立ちはだかるということだ。
 県の第2次観光振興計画と地球温暖化を念頭に置いた環境保全率先実行計画には、具体的な保全策が見当たらない。沖縄なりの文言は並ぶが、国の対策をなぞる域を出ていない。
 地球温暖化問題が世界的な懸案となって久しい。温暖化の悪影響が最初に及ぶと予想されるのは、わが国では沖縄だ。先島諸島のさんご礁に囲まれた島嶼の美しい姿に迫りつつある温暖化の牙を想像してもらいたい。
 那覇市泊港の岸壁が、海面上昇で海水に洗われた記憶は新しい。一時的な現象で済んだが、そんな事態が沖縄各地を襲わないとは言い切れない。
 県や市町村にできることは「振興計画」の準備だけではない。振興の基になる「資源」の保全である。振興計画と「環境保全計画」は不離一体のものだ。
 大型ホテルの建設ラッシュは、観光客が年間600万人の実績が目前なった現状からすれば、「1000万人」を目標とするくらいの元気がなければ駄目だということだろうが、私には、前のめりの気がしてならない。
 「リゾート・バブル」の気配が漂っている。沖縄観光は環境保全を最優先にすべき時期きている。地球が「加熱」すればどうなるのか。
 行政は、この深刻な問題から目を離してはならない。  (07年4月30日)