【普天間協議】

■複雑な事情を抱えた普天間協議


 1月19日の政府と沖縄の第3回会合は、普天間問題の先行きに波風が立たないよう調整したうえで実質的な協議が始まったことを印象付けるためのセレモニーといえる。
 政府案に沿って協議を続けることで沖縄は基本的に合意はしたが、それは、あくまでもV字形滑走路の修正をも含めた協議の開始というのが沖縄のとらえ方である。
 第3回会合に臨むに当たって防衛省は慎重に根回しをした。対米関係への配慮があったのは言うまでもないが、それは在日米軍再編に重大な影響を及ぼしかねないからだ。加えて国内的にも再編の関係地との最終的な詰めが行われていないことへの懸念がある。
 普天間飛行場の移設に前向きな仲井真知事らにとっても、政府のペースで事が進められることへの不安があった。
 昨年11月の知事選に際して、仲井真氏はV字形滑走路案に反対し、「政府案の修正」を公約とした。さらに、普天間飛行場の3年以内の「閉鎖状態」を求めている。稲嶺前知事が日米合意内容に全面的に反対したことに比べれば、仲井真知事は「政府より」と見ることもできるが、「3年以内の閉鎖状態」は新たな火種とのなりかねない。
 仲井真知事は、沖縄側の考えを強く主張せざるを得ない事情もある。
 知事選に立候補した糸数慶子氏の議員辞職に伴う参院補欠選挙、そして夏の参院選本番は、自身の政治的影響力にも響く。県民の投票行動を左右しかねない。
 さらに、県議会の2月定例会は、仲井真県政が初めて議会の場で追及を受ける場となる。多数与党の県議会といえども、後に控える国政選挙と切り離して考えることはできない。
 否が応でも、県民の関心が高い普天間問題では「沖縄の言い分」を主張しなければならない理由のひとつにそれがある。
 このことは、単に沖縄に限られるものではない。日米合意を無理押しすれば、悪くすれば仲井真県政を窮地に追い込む危険性もある。その跳ね返りは当然、国に向かう。
 それ故、政府と沖縄の正式の会合の席は避けながら、沖縄の言い分を非公式な話し合いの中で聞いたのである。
 公式な場と非公式な場を使い分けながら、双方がそれぞれ説明がつくようにしたのが第3回会合と言っていい。
 
 沖縄問題は過去も現在も、ハイレベルの政治協議で事が前進してきた。政治判断があって初めて事務レベルの作業が動き出す。
 ハイレベル協議とは閣僚クラスが出席して行われる。それに外務、財務、防衛、内閣府の局長級の官僚が陪席する。対する沖縄側は、知事、市町村長だ。
 沖縄県以外の自治体で、このような協議の場がセットされることは、まずあり得ない。基地問題、日米同盟と切り離せない沖縄の現実が、他ではあり得ない会合を可能にしている。
 第4回目の会合が行われるのは、おそらく沖縄県議会や市町村議会の2月定例会を終える3月下旬以降だろう。
 政府は、5月中には環境現況調査に着手したい考えだ。この予定が可能かどうかは、次の会合の成り行き次第だ。
 ともあれ、時間にさほどの余裕はないのである。  (07年1月26日)