【 橋下人気にあやかる自民】

◎総選挙前の思惑が見える

 いかにも 橋下大阪府知事知事らしい言い回しである。
 自民党の中川元幹事長や菅選対副委員長(元総務相)らが開いた4日の勉強会で講演した橋下知事は、自民党の体質を厳しく批判「(総選挙で)民主党に勝つには『ぎょへー』と思い『そんなアホな』と言われるくらい強烈な改革案を示さないと、国民は民主党(の可能性)にと、歯に衣着せぬ言い方で注文をつけた。
 この会合に先立って、知事は自民党若手の集まりでも「このまま選挙になったら、自公は確実に負ける」と言い放っている。

 橋下知事を勉強会に招いた自民党の意図は、総選挙に向けて「人気知事」を呼んでの話題づくりであることは疑いないが、地方自治体の首長が無礼講で与党に物申すことができるようになったことは、国と地方の関係の今後を考える上で大きな変化と言っていい。
 内閣支持率が底を這うような状態が続いていたころ、私は自民党選対が有権者に受けのいい知事を取り込んで与党のイメージアップ作戦を考えていることを取り上げた(「知事の取り込み作戦」―「甘い言葉に乗せられるな」=09215日)。
 知事就任以来、「大阪府は倒産会社」などとストレートな物言いで府職員を怒らせたり、補助金問題で府内の首長と激論を交わしたりするなど、地元での話題を欠くことはなかった。 だが、橋下知事の存在を大きくしたのは、国の直轄事業負担金問題で「ぼったくりバーの請求書みたい」と国土交通省をこき下ろし、支払いを拒否したことである。
 知事の発言は、国と地方の関係を「奴隷制度」と決め付け、諸悪の根源は霞が関とばかりに「霞が関解体」を公言するまでエスカレートした。
 現在の都道府県知事の半数は官僚OB知事だ。行政の専門家を自任する彼らは、間違っても口にする言葉ではない。かつての物怖じしない改革派知事が姿を消し、全国知事会自体の存在意義が問われる中で登場した東国原宮崎県知事や橋下知事らが、特異な振る舞いで地方自治の戦いに参戦したのである。

橋下知事を勉強会に招いた自民党に思惑があるのは当然だが、呼ばれた 橋下知事も手ぶらでノコノコ上京したわけではない。問題が出るごとに鳩首会合で要望書をまとめ、内閣や与党に善処を求めるのが全国知事会をはじめ地方6団体の変わらないやり方だ。「国と地方の協議の場」はあるが、物事がその場で大きく動くことはまずない。
 時折、橋下知事が想定外の行動に出るのは、旧態然としたそんなやり方では問題は解決しないと思ってのことだろう。
 自民党は、激しい言葉が浴びせられることを承知の上で 橋下知事を招いた。そして、きつい言葉に自己改革の意思を表すことで応え、党の度量の大きさを示すことができたと考えているだろう。一方、 橋下知事にとっては、常日ごろ永田町や霞が関に対して持っている鬱積したものを吐き出す、うってつけの場だったに違いない。関西の東京に対するライバル意識も、知事を走らす要因だったかもしれない。
 総選挙を前にした自民党の思惑を垣間見る勉強会である。

0966日)