【がんばる自治体】

◎地域の底力を信じよう

 小泉内閣による国と地方の税財源に関する三位一体改革の傷跡が生々しい。改革は地方自治体の自主性を高めるため、国が地方を縛る手段となる国庫補助金を大胆に削減し、併せて国が独占してきた税財源を地方に移譲、地方交付税のあり方も抜本的に見直すことだった。
 だが、その結果はどうだったか。いまさら言うまでもないが、2004年度から06年度までの三位一体改革で、補助金は47千億円(03年度の先行分も含む)が、また地方財政の虎の子財源である地方交付税は5兆円がそれぞれの削られた。代わって国から地方へ移った税源は3兆円だから、差し引き約6兆円のマイナスだった。
 権限はもとより、地方が権限を行使するために欠かせない財源が三位一体改革の名の下に、こんなに削られたのでは地方はたまったものではない。地方から「まやかしだ」「だまし討ち」などと、猛烈な反発が表れたのは当然である。
 こんな状況の下で地方自治体、とりわけ、中小自治体は降ってわいたような難局にどう立ち向かっているのか―。こんな問題意識から私が企画・編集・製作の責任を預かっている自治問題の政策研究情報誌「地域政策」(季刊)で「ニュースルポ/がんばる自治体」の企画を同時にスタートした。

 手前味噌になって気が引けるが、少しばかり内容を紹介してみたい。
 04年夏季号からこれまでに全国の60自治体(延べ)が登場した。環境、地域振興、市町村合併、地域の絆、歴史・文化など、さまざまなテーマで地方の生の声を読者に届けることが出来たと思っている。
 意外だったのは、地域おこし、まちおこしのアイデアが静かな町にみなぎって、これがどういうルートで知られるのか不明だが、他地域に伝わり、これがエールを交換するように大きな輪となって「元気な地域」を実現していることだ。
 平成の大合併に乗り遅れたと言われながら、その実、単独村を選択した村民の気概や自立のアイデアは、「こんなこともあるのか」と思わせる。
 疲弊し、シャッター通りだった旧中心街が若者らの知恵で再生した事例、高齢化で元気がなさそうな農村が、意外にも「達者村」だったことをどれほどの人が知っているだろうか。
 小規模自治体だろうが、捨てたものではない。コミューニティがなくなった都市などよりも、もっと生命力、地域力を備えている。
単純に経済指標を見比べて、地域や集落を「格付け」してしまうと実体からかけ離れたイメージができてしまう。単なる数字でしかない指標に、地域の血を通わせて、初めて生きた人間社会ができるのだ。

 筆者は私が共同通信編集委員・論説委員時代に知り合った全国の共同通信社加盟社の編集幹部やベテラン記者らを介して執筆してもらった。いずれも地元を知りぬいたベテラン記者による文章だから、説得力も十分だ。
 「地域政策」は地方分権問題が本格化した時期に創刊した、学者や専門家による行政論を中心とした本質的には堅苦しい政策情報誌なのだが、「がんばる…」は実体社会の生の姿を紹介することで、自治問題の広がりを追求するものだ。

09524日)

 本稿に興味のある方は三重県庁ホームページの「政策部」の項目を開いて「政策研究情報誌『地域政策』について」をクリックしてください。あるいは、三重県庁政策部企画室別室(〒514−0004 三重県津市栄町1−891 電話059・224・2767)までご連絡くださっても結構です。