☆沖縄サミットが閉幕し、普天間飛行場の移設問題をめぐる政府と沖縄県の折衝が始まった。経済振興に併せて代替飛行場建設の工法は、地元と本土大手企業の思惑が絡み複雑な動きを始める。

資料版「論説」

◎行動で示せ15年問題の重さ


 主要国首脳会議(沖縄サミット)が閉幕して一カ月が過ぎ、沖縄問題が再び動きだした。
 政府は二十四、五の両日、普天間飛行場の移設にかかわる沖縄北部振興や普天間返還跡地利用に関する協議会に加えて、普天間代替施設(基地)の工法などを検討する協議会を開く。また、森喜朗内閣発足後初めてとなる閣僚級の沖縄政策協議会が開催される。
 特に焦点となる代替施設協議会は、普天間移設問題に直接かかわるだけに、論議が紛糾することも避けられないだろう。前途は険しい。
 稲嶺恵一知事も出席する沖縄政策協議会が開かれるのは昨年十二月中旬以来、八カ月ぶりである。

 昨年暮れ、普天間飛行場を名護市辺野古沿岸域に移設することが決まり、政府と県は年明けから移設先を中心とした沖縄県北部地域の経済振興策を地元とともに詰めてきた。それを踏まえて決まった十年間で一千億円を投入する振興予算のうち初年度分の百億円の事業内容を決めるほか、全県的な将来ビジョンを描く「沖縄振興二十一世紀プラン」の最終報告が政策協議会に提出される。
 普天間飛行場の広さは約四百八十ヘクタールに及ぶ。この広大な基地の返還跡地の再利用は、現行の都市計画法や土地区画整理法などでは対処不能で特別立法も検討されなければならない。さらに、軍用地主に対する地料保証期間(現行三年)の大幅延長の問題などもある。
 このほか、基地内の土壌汚染問題も懸念されており、跡地対策の協議に立ちはだかる諸々の問題を乗り越えて成案を得るのは生やさしくない。このため、基本的な問題を整理した上で正式な協議会の発足となろう。

 北部振興策や「二十一世紀プラン」はほぼ順調に作業が進んだ。跡地利用策も難問に違いはないが、政府の熱意と地元の協力さえ得られれば解決できる。
 これに対して、普天間飛行場の代替施設の態様を具体的にどうするかという問題と施設の使用期限十五年問題は、普天間移設を左右しかねない問題である。
 沖縄県は代替施設を民間も利用できる軍民共用空港とするよう要請、政府もこれを受け入れている。
 現在取りざたされている代替施設の工法は、大ざっぱに言って「埋め立て」「くい打ち」「メガフロート」の三案が基本。これに「埋め立て」と「メガフロート」の複合案などが浮上、受注のチャンスを狙う本土の大手鉄鋼、造船、商社と地元企業が入り乱れた商戦を展開している。
 また施設の規模でも、民間部門をどの程度確保するかは、全体規模にも影響してくる。米側が要求する基地機能の維持と民間施設を合わせると、計画規模は大きくならざるをえない。

 代替施設協議会は、施設建設に当たってこうした技術的問題を協議することが主眼で、その上で建設の基本計画を策定する。
 だがその中で、使用期限問題がどのように扱われるのか。沖縄県知事と名護市長は、ともに使用期限十五年を条件に移設を容認、政府も対米交渉を約束した。しかし、これまでは「沖縄の言い分を米側に伝えた」域にとどまり、真剣なやり取りはなかった。まして米大統領選が本格化している今の状況では、日米間の政治折衝は全く期待できない。
 個別具体的な話し合いの場となる代替施設協議会といえども、「十五年問題」を避けて通れない。

 サミット後、稲嶺知事は機会をとらえて十五年問題に言及、政府にこれまでになく問い掛けを続けている。知事の心を推し量れば、より強い対米折衝と森内閣の政治判断を求めている、ということである。政策協議会でも当然、政府方針の前進を要請するだろう。
 自民党の野中広務幹事長は今月十日沖縄を訪問した際、十五年問題に直接言及はしなかったが、北東アジアの安全保障の構築が沖縄問題解決の前進に不可欠との認識を示し、その努力を尽くすと述べている。幹事長は「サミット後、『沖縄』がまた始まる」と言った。
 振興策に劣らず、十五年問題が重いことを政府は具体的行動で示してほしい。政策協議会と代替施設協議会は、その出発点になる。

2000824日付)