【分権漂流】

◎現状認識がなさすぎる

 二重行政や税金の無駄遣いの典型といえる国の出先機関は、地方を意のままにコントロールする「代官所」のようなものだ。それも、国交省、経済産業省、厚労省、財務省など霞が関の省ごとに統治システムが全国に張り巡らされている。中でも公共事業に関係する出先機関の役割は、当の本省さえも手が出せない様相を呈している。
 財政事情が悪くなって、直轄事業の追加負担に耐え切れなくなった知事らが閣僚に直訴して実態が明らかになったが、これほど権限と財源を使った国と地方の上下関係を示すものはない。先の本ホームページにも記したが、国から一片の説明もなく突然高額の請求書を送りつけられたのでは、地方自治体はたまったものではない。

 こんな出先機関の統廃合を提言したのが、地方分権改革推進委員会が昨年暮れ麻生首相に出した第二次勧告である。この勧告を受けて政府が今月(3月)末までに決定する出先機関改革の工程表に、国交省の地方整備局など9機関を統廃合する組織改革案が盛り込まれないという。
 霞が関官庁の抵抗に加えて、出先機関の職員削減や公共事業執行への影響を心配する自民党内の反対の声が、衆院選を控えて広がっているからだ。政府の経済対策が具体的な効果を表せない現状に目をつぶって、行政改革を云々することは「ばかげたこと」で、しかも選挙を考えたら「無駄なこと」でしかない、というわけだ。
 出先機関の統廃合(見直し)は全国知事会をはじめ地方6団体がかねてより求めていることで、地方分権委の勧告は地方のそんな声を具体的に示したに過ぎない。こうして見ると、今の政府や霞が関には民意が届かない危機的な状況と言わざるをえない。

「地方政府創造会議」が322日、東京都内で開いた臨時拡大幹事会で分権改革推進の緊急決議を採択したことは、政府に対する激しい抗議の意思表示である。
 決議は最初の項で「『中央政府』に日本の将来構想はなく、政策も国民の意識とずれている」と明言した。続けて、緊急経済雇用対策は前例踏襲、全国一律運用などで地域の実情や住民のニーズとあっていない。「中央政府」は中長期の国づくりの理念や構想を全く打ち出せていない、とバッサリ切り捨た。
 地方政府創造会議は、政治と中央行政のあり方に疑問を持つ地方自治体の首長や地方議員、有識者らが立ち上げた「地域・生活者起点で日本を選択・洗濯する国民連合」(せんたく)のメンバーが昨年3月発足させた。
 「せんたく」とは、地域や生活者の立場から政策・仕組みを「選択」し、かつ、汚れた統治システムを「洗濯」するというものだ。「選択」と「洗濯」を同時に手掛ける狙いでスタートした。共同座長は山田啓二・
京都府知事らで、この日の幹事会には東国原宮崎県知事ら30人が出席した。

 中央政治の体たらくは、定額給付金や「バナナの叩き売り」にも似た高速料金の引き下げなど一時的、場当たり的な政策と、首相官邸での有識者会議のような「聞きっぱなし」パフォーマンス政治に、その正体を見る。
 国民が信を置かない政治が、どのような振り付けをやろうとも、実体が不明なままでは効果を期待しても無理というものだ。「仕掛け花火」の華やかさは瞬時に消える。
 100年に1度の経済危機」であるなら、それへの対応も「100年に1度の対応」がなければならない。場当たり的で将来展望を示せないような対策は誰も望んでいない。国民が政治に倦む雰囲気が漂っている。それにも気づかないようでは、何をかいわんやである。

09323日)