★普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沖合に移設する政府と沖縄県側との協議は、具体的な建設工法等を話し合う代替施設協議会の詰めが進んだ。そして、協議会がスタートして9回目となる協議で代替施設の基本計画が決まった。施設は米軍だけでなく民間も利用できる「軍民共用空港」とし、工法は「埋め立て工法」の採用と決まった。いわゆる、人工島を造って代替施設を建設するものだ。基本計画は決まったが、今回も沖縄側が普天間移設の条件とした「15年使用期限」は論議から外された。

「論説」「普天間代替施設基本計画」

◎「15年問題」の解決探れ

 米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古沖合に建設される代替施設の基本計画が、政府と沖縄県側による二十九日の代替施設協議会で決まった。
 埋め立て工法を採用し、面積は最大で百八十四ヘクタール。オーバーラン部分を入れた滑走路は約二千五百メートル(本滑走路は二千メートル)、幅は約七百三十メートル、建設地点は辺野古の中心地域から約二・二キロのリーフ上。埋め立て工法による建設費は約三千三百億円を見込んでいる。同施設の維持・管理費は年間八千万円とはじいている。建設に当たっての環境影響調査は、早ければ年内にも着手する予定だ。
 基本計画の決定で、普天間移設問題は手続き的には建設に向けて大きく前進する。今後は沖縄県知事や地元名護市長が条件とした「十五年の使用期限」「基地使用協定の締結」「環境対策」に、国が具体的にどう答えるかが焦点となる。

 代替施設協議会は昨年暮れに続く九回目になる。
 昨年三月の第六回会合から工法、規模、建設場所の具体的検討に着手、以後、「埋め立て」「くい式桟橋」「ポンツーン」(海上浮体施設)三工法八案の提示、検討を重ねた。その結論が今回の基本計画である。
 基本計画は施設の規模を当初案より縮小、建設位置も若干沖合に移し、建設費、維持費が比較的割安な埋め立て工法を採用した。環境に対する地元の懸念、地元企業の受注機会を考慮した結果である。
 一九九六年四月、普天間飛行場全面返還で合意した日米両政府は、当初、沖縄側の懸念に配慮する形で撤去可能な「海上ヘリポート」計画を推進する予定だったが、沖縄側の反対で挫折した。その後、経済振興とセットにした稲嶺恵一知事の「軍民共用空港」構想の実現に方針転換した。
 普天間代替施設を米軍専用の基地としてだけではなく、民間機も乗り入れができる軍民共用空港にしようとしたのは、基地の新設に反対する県民感情を考慮する一方、空港を核とした産業集積を狙った、基地問題と経済振興を念頭に置いた二正面作戦だ。
 基地問題で現実的対応をとる知事の考えに反発は依然根強いが、基本計画が順守されるのであれば、というのが知事や市長の偽らざる気持ちであろう。

 だが今回も、基地の長期固定を排する「十五年問題」は、何ら進展しなかった。稲嶺知事は協議会の席上、これまでになく使用期限を守るよう要請している。協議会後も、自ら進んで記者団に使用期限の話を説明している。
 地元は約束の履行を求め、政府は国際情勢を理由にあいまいな返答をする。沖縄サミット(主要国首脳会議)以降、こんな光景が何度も繰り返されてきた。
 基地の使用期間を限定することは、軍事常識的には考えられないが、政府は名護市長が受け入れ条件とした、この使用期限を「重く受け止め、対米交渉で伝える」との政府方針を閣議決定している。
 政府は、これまでも米国との話し合いの中で取り上げてきたと言うが、正確に言えば「沖縄が求めている」とひとごとのように言ってきたにすぎない。「日本が求めている」とは言っていない。

 稲嶺知事は協議会で、着工までに使用期限問題が一定の方向を示すよう求めた。環境影響評価(環境アセスメント)の作業は約三年、建設に約十年の時間を要する。言い換えると、順調に作業が進めば、三年後には着工可能となる。つまり使用期限問題は、三年の余裕しかないということだ。
 「米国には言っている」「いや言っていない」の水掛け論をしている時間はないはずだ。知事の言葉に「一定の方向を」とある。日米双方が譲り合える「着地点」を目指して早急に折衝を開始すべきだろう。
 政府は、普天間問題は国内問題と言いながら、米側の世界戦略に呼応するように、使用期限問題を棚上げしてきたのが現実だ。あらためて指摘するが、基地機能が果たせるかどうかは、そこに住む住民の協力が得られるかどうかで決まる。七二年の沖縄返還も普天間返還合意も、盛り上がる世論を背景としている。この教訓を思い起こしてほしい。

02731日付