「時言」

◎良き隣人か

 沖縄・先島地方に旅した印象は米軍基地とは無縁で、自然の美しさも沖縄本島とはひと味違った温かみがあった。地元の生活もどこかゆったりしていて、別世界の雰囲気すらあった。
 こんなのんびりした島に突然米軍機が爆音を響かせて舞い降りてきたら―。想像するまでもない。驚きと基地の島、沖縄の現実を思い知らされるだけだ。
 先ごろ、米海兵隊普天間基地所属のヘリ四機と給油機一機が宮古島の下地島空港(伊良部町)に飛来した。フィリピンで実施される米比合同演習に向かう途中、給油のため着陸したのだが、県の自粛要請は無視された。

 沖縄の米海兵隊は昨年四月から五月にかけても、同じ合同演習参加機の往路と復路の二度にわたって下地島空港を利用している。米軍機の民間空港利用は、緊急時以外好ましくないと県はこの時も申し入れたが、聞き入れられなかった。
 着陸は日米地位協定で認められていると米軍は主張し、日本政府も同様の立場だ。今回の着陸が「緊急性」「やむにやまれぬ」ものであったか疑わしい。地位協定で認められているから、と木で鼻をくくったような言い分が許されるほど、沖縄の基地問題は生やさしくない。
 下地島空港は三十年前の沖縄の復帰直前、軍事的利用をしないとの念書を当時の日本政府と琉球政府が交わし、パイロット訓練飛行場として建設された。当時の沖縄の厳しい反基地感情を考慮したからだ。
 そんな経緯があるから県も伊良部町も米軍の利用に反発している。過去にほおかむりしての地位協定うんぬんは説得力が欠ける。
 復帰後、悪天候避難を含めた米軍機の飛来は約五十回。緊急性が疑わしい着陸は昨年が九年ぶりだった。国会の有事関連法論議も始まった。米軍は無神経な行動を厳に慎むべきだ。「良き隣人」であるならば。

02428日付