★自民党の鈴木宗男衆院議員が離党した。アフガニスタン復興支援会議への一部NGO参加拒否に関与した疑いと、北方領土・国後島の「友好の家」(通称ムネオハウス)問題で引責離党した。鈴木氏は当時の田中真紀子外相との確執も表面化していた。鈴木氏は三カ月後、東京地検特捜部に逮捕される。
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【時言】

◎悲しい政治家

 貧しい生い立ち、苦学生、そして政治家秘書を経て念願の国会議員のバッジを胸にした。自民党の最大派閥に籍を置き、持ち前の行動力は群を抜いていた。時の有力政治家にぴたりと寄り添い、細大漏らさず政官界の情報を集めた。その情報量とバックにいた大物の存在は、鈴木宗男衆院議員の虚像を膨らませていった。
 二世議員が当たり前の国会で、本人が言うように「努力」で、派閥の領袖(りょうしゅう)でもないのに、二番目に多い政治資金を集める実力を持つに至ったのである。
 この鈴木氏が自民党を離党した。涙ながらに潔白を訴える姿は、哀れさえ感じさせた。
 国会で一連の疑惑を追及されて、鈴木氏は「私はたたき上げの政治家」と言い放った。親の遺産を引き継いだり、強大な組織を背景に、難なく国政に登場する議員とは根性が違うと言いたかったのかもしれない。

 残念なのは、たたき上げの政治家に対する国民の期待を裏切ったことだ。次々と出てくる疑惑は常軌を逸している。政治家に求められる経綸(けいりん)など、みじんも感じられない。悲願の北方領土返還の原点の地、根室市のことを考えるのは間違っていない。だがやってきたことは、私欲以外のなにものでもない。
 外務省は利権とは無縁と思われてきた。族議員がばっこする国会で「外交族」が話題にならなかったのは、単に選挙で「票」にならないからだけではない。俗に言う「うまみ」がないと思われていたからだ。そんな外務省に鈴木氏は、独特の政治感覚で乗り込み「どう喝」と「懐柔」で君臨した。外務官僚はひたすら追従する一方、鈴木氏の政治力を利用した。
 鈴木氏の疑惑は徹底的に糾明されなければならない。同時に陰に隠れがちな外務省を根底から改革することも忘れてはならない。外務省の構造的欠陥を浮き彫りにしたのは「宗男効果」なのだから。

02317付