★小泉内閣が4月誕生、日米首脳会談が行われた。両首脳は日米安保の強化を確認したが、首脳会談に併せたかのように沖縄・北谷町で米兵の婦女暴行事件が発生、両国政府は慌しく事件の対応を表明する。政治レベルの協調をあざ笑うような沖縄の現実を浮き彫りにした。

核心評論「沖縄米兵事件」

◎交流事業中止の可能性も 

 深まる米軍と県民の溝 

 沖縄県民の感情を逆なでするような事件がまた起きてしまった。
 沖縄米軍の空軍軍曹による婦女暴行事件のことだ。続発する事件のたびに米側は綱紀粛正を約束し、事実その努力を重ねてきた。そして「良き隣人」の関係を県民との間で築くと誓った。だが事件は、そんな約束を無残にも踏みにじるように起きた。

 日米両政府とも事件に対してかつてないような機敏な対応を示している。しかしそれで事件が解決する、再発防止になるというものではない。
 日米首脳会談で小泉純一郎首相とブッシュ大統領が同盟関係の重要性を確認し、戦略対話強化で一致したまさにそのときに沖縄で事件が起きたのである。大統領はすぐさま遺憾の意を表したが、首脳会談で沖縄問題はさほど重視されなかった。

 「あいつら(米兵)に付ける薬はない」と内閣府幹部は吐き捨てるように言ったが、この言葉に事件防止の妙案がない政府のいら立ちが表れている
 皮肉なことに沖縄の米兵事件は大きな政治日程に合わせたように起きる。昨年七月の主要国首脳会議(沖縄サミット)開催直前の海兵隊員によるわいせつ事件、そして今回の事件である。
 米兵の性犯罪が続発するのは今に始まったことではない。一九七二年の日本復帰前後の事件は、公然化するのはごく一部にすぎなかった。事件捜査権を奪われた日米地位協定の内容が事件のたびに問題化した。九五年秋の少女暴行事件を機に運用見直しはできたが、沖縄県が要求する地位協定改定は手付かずのままだ。
 八万人を超す県民が集まった、少女暴行事件に抗議する県民大会は、沖縄米軍基地の在り方を根源的に問うた。その結果、米軍基地の整理・縮小計画の日米合意がなり、その中に普天間飛行場返還が盛り込まれた。
 日米合意には暴行事件の反省という側面はあるが、より重要なのは九六年四月の日米安保共同宣言に基づく、日米同盟関係の再構築を目指した日米合意というのが真相だろう。相次ぐ米兵犯罪は、この日米同盟関係強化の中で起きだしている。

 性格は異なるが、在日米海軍艦載機による夜間離着陸訓練(NLP)に抗議する神奈川県大和市青森県三沢市の動きは、在日米軍の訓練が住民意思とは無関係にできにくくなっていることの表れだ。
 大和市三沢市は昨年秋、米軍の一方的訓練に反発して米軍との交流事業を中断した。米軍側が訓練計画で譲歩し双方の交流は再開されたが、両市とも米軍が最も嫌う交流中止という強硬手段に出たのである。
 沖縄県議会や基地所在市町村議会は事件のたびに抗議決議を可決している。最近では抗議にとどまらず、明確に海兵隊削減や撤退さえ求めだした。
 議会決議は地域住民意思の表現であり重みを持つが、軍紀粛正の効果は不透明だ。沖縄県内各地で行われている市民レベルや行政レベルの交流事業が、中止されたり中断されるようなことはあり得ないのか。
 少女暴行事件をほうふつさせる県民の反発は激しい。もし米軍との交流がストップするようだと、影響力は議会決議以上に大きい。大和市三沢市にその例を見ることができる。

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