★普天間飛行場の移設問題は、肝心の基地の形態、使用条件・期限など移設受け入れの条件が脇に置かれたまま建設工法が示される段階まで進んだ。普天間問題は政府ペースで動き出したが、地元の不信は強くこのまま問題が進むとは思えない。

核心評論「岐路に立つ普天間移設」

◎「15年問題」の本格論議を

 容易でない局面転換

 米海兵隊普天間飛行場の移設問題を協議する政府関係閣僚と沖縄県側による代替施設協議会で示された代替施設の三工法・八案は、昨年八月の協議会発足から十カ月かけて、政府がようやくたどり着いた「青写真」である。と同時に、普天間移設作業が新たな段階に入ったことを意味する。
 政府側が説明した内容は、これから沖縄県や地元名護市が詳細な検討を重ねることになる。どんな結論になるか予断を許さないが、「ボールは沖縄に投げられた」(政府筋)ことは確かだ。
 焦点は沖縄側の対応だが、代替施設の使用期限(十五年)問題がより具体的に論議の俎上に載るのは避けられない。
 稲嶺恵一知事と岸本建男名護市長は協議会の席上、あらためて使用期限を順守するよう求めた。小泉純一郎内閣になって顔触れが入れ替わった閣僚に移設受け入れの条件を念押ししたのだが、政府の反応はこれまでの域を出ていない。
 着々と進む政府の移設作業が、十五年問題をあいまいにしたままでは、普天間飛行場移設「受け入れ」の紳士協定がほごになりかねない、との危機感が知事らに根強い。それ故知事は先月訪米、基地問題の深刻さを訴えたのである。

 岸本市長は一昨年暮れ、普天間移設の条件として経済振興、自然環境への配慮など七項目を提示した。この中で基地使用協定の締結や使用期限を求め、政府は閣議で七条件を担保した。
 経済振興や環境問題で政府の対策は具体化しつつあるが、一方で基地対策にかかわる十五年問題は打開のめどさえ立っていない。こんな状況の下で代替施設の選択肢が示された。
 外交・安保の視点から、十五年問題が将来を予測できない以上、「極めて困難」と片付けるのはやさしい。だがこの問題を不透明にしたままだと、基地移設と振興策がセットになった普天間問題は、振興策だけが独り歩きするという、いびつな形になりかねない。現状は少なくともそんな気配が濃厚だ。
 このため政府は、今回の協議会を機に局面転換が図られることを期待しているわけだ。だが知事や市長にすれば、局面転換はあくまでも十五年問題の進展があればこその話、である。
 十五年問題は今回、普天間移設の「入り口」と明確に位置付けられた、と言っていいかもしれない。
 知事も市長も県民世論を慎重に見定めながら動くだろう。政府も拙速を戒めている。移設の基本計画策定に、なお多くの時間を要するのは避けられない。

 小渕恵三内閣以来、十五年問題は首脳レベル、外交レベルでも再三取り上げられながら、日本政府自身の問題としてどれほど真剣さがあったか、はなはだ疑わしい。知事が先の訪米で味わった米政府の壁の厚さは、裏を返せば知事が言うように「日本政府の努力不足」となる。
 小泉内閣が日米同盟の根幹をなす在日米軍の在り方にメスを入れるとは考えにくい。しかし「小泉流」の改革が、外交分野に及ばないとは断言できない。沖縄の海兵隊をめぐる米国内の論議は明らかに変わりだしている。十五年問題も、「第三の道」の模索があるかもしれない。

0169日付