連載企画「普天間移設の死角」4回続きの(2)「政治日程」

◎今後を左右する参院選 

 政府内には悲観的見方も

 普天間飛行場代替施設の軍民共用空港化と使用期限「十五年問題」は、沖縄米軍基地の整理・縮小を現実的に進めるため沖縄側が強く求めている条件だ。
 十五年問題は「国内問題」とはいえ、日米両政府に突き付けられた沖縄の意志である。そして政府をさらに悩ましくさせているのが政治日程である。
 政府と沖縄県による代替施設協議会が、どんな工法を採用するかなど本題はこれからだ。政府側が協議会で説明した工法は@くい式桟橋A鋼鉄製の箱形構造物を浮かべる「ポンツーン」(メガフロート)B埋め立て人工島方式―で、次回以降の協議会で具体的な論議が始まる。
 着工に向け「一日も早い基本計画の策定」(政府筋)を狙う政府関係者は遅くとも七月の参院選前の計画取りまとめを目指しているが、果たして間に合うか。

 政治に予断は禁物だが、参院選は連立内閣に厳しい結果が予想される。結果次第では政局が激動、協議会の論議が宙に浮く状況さえあり得る。そのためにも、早めの策定となるわけだ。
 これに沖縄県内の日程が加わる。来年二月の名護市長選、同十一月には知事選が控える。基本計画策定が遅れるようだと、岸本建男市長は協議会の論議をさらに深めるよう迫るだろう。再選を狙う以上、政治家としてリスクの大きい行動に出ることは考えられない。
 稲嶺恵一知事も事態が流動化していれば、慎重な行動を取らざるを得ない。
 一段と不透明さを増しかねないが、政府筋も「市長も知事も具体的に(代替施設に)触れることは政治的にまずいと考えるはずだ」と語った。
 その点十五年問題は、代替施設の工法や建設場所などと違って、いわば“原則論”。原則論を強調しておけば、市長や知事としての政治的失点はなく時間も稼げる、と政府筋は推測する。
 こうした政治日程の先にはさらに厳しい状況が予想されるようだ。別の政府筋によると、参院選前に普天間移設の基本計画がまとまらなければ、普天間問題は二年後に先送りなってしまう。そして普天間移設は「ゼロ」からのスタートになるとの見方を示した。
 日米同盟関係に深刻な影響を与えかねないハワイ・オアフ島沖の米原潜と実習船の衝突事故では、外務省の対応の悪さが指摘されている。日本側の対米姿勢の弱さは、そのまま沖縄の基地問題にも通じる。
 米兵による事件・事故が頻発する沖縄で県議会はこのほど在沖縄米海兵隊の削減や地位協定の見直しを求める抗議決議を続けざまに全会一致で可決している。一九七二年の復帰から米兵の事件・事故で沖縄県議会が可決した抗議決議は百六回。一年で三回を超える決議をしている計算だ。
 原潜事故や沖縄米兵事件が日米関係にきしみをもたらしているが、これが県議会決議をさらに重くしたのは間違いない。海兵隊削減要求決議自体が異例だったが、原潜事故は沖縄米軍基地をクローズアップさせた。十五年問題は原則論を超える力を持つようになるかもしれない。

010227日付