☆サミットが開幕した。小渕首相の突然の死去で登壇した森首相の議長としての采配はどうだったのか。沖縄で開催したサミットの意義は必ずしも明確にはならなかった。

核心評論「日米首脳会談」

◎外交の厳しさ見せた大統領

  開けない基地問題の展望

 主要国首脳会議(沖縄サミット)で唯一、沖縄の基地問題を話し合う機会となったのが、森喜朗首相とクリントン大統領の日米首脳会談である。
 直接沖縄入りした大統領が、沖縄県南部糸満市の平和祈念公園の平和の礎(いしじ)で行った県民へのメッセージは、少なからず県民に感動を与えた。県民の多くは、日米首脳会談に「ある種の期待」を持ったはずだ。しかし期待は外れた。両首脳が今年五月初め、初めて会談した時の内容と全く同じだったからだ。

首脳会談は約三十分。通訳を交えてだから、実質的な会談時間はわずか十五分だ。この中で基地問題をはじめ、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定、NTT接続料金引き下げ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル開発中止など両国間の重要問題が話し合われた。
 基地問題に割かれる時間は最初から限られていた。四十年ぶりに沖縄を訪問した米大統領が、直接県民に語り掛ける場を、国籍を問わず戦死者の霊を弔う平和の礎としたことに米政府の並々ならぬ配慮がうかがわれる。「深謀」と言っていいかもしれない。
 二十三万余の霊が眠る平和の礎に一年中、墓参者が絶えることはない。平和を希求する県民のメッカである。クリントン大統領は猛暑の中、ここに立って「ただの戦争の追悼碑ではなく、人類が二度と同じ過ちを繰り返さないという共通の責任があることを思い出させてくれる」と語り、過大な米軍基地についても「われわれの足跡を減らす」努力をする、と約束した。
 首脳会談で森首相は、基地が集中する県民負担の大きさを挙げて、日米が合意した基地整理・統合の着実な実施を表明。在沖米軍の兵力構成でも国際情勢の変化に対応した協議を求めている。首相就任直後に訪米した前回の会談より基地問題への言及はあったが、もう一歩の踏み込みがない。そんな首相を見越したのか、大統領も「緊密な協議」を型通り答えたにすぎない。

 外交とは武器を使わない戦いであり、国益の追求である。前日の県民へのメッセージの中身とは異質な大統領の首脳会談での対応に、米政府の厳しい外交姿勢がうかがえる。朝鮮半島情勢に変化が表れながら、大統領が沖縄基地の重要性を強調するのは、沖縄の「死活的役割」が米国の世界戦略上欠かせないからだ。
 外交に不慣れな首相といえども、五年前の村山富市首相以来の歴代内閣が引きずってきた基地問題の大きさが分からないはずはない。従来の域を超えない内閣のスタンスが続く限り、基地問題の前進はない。
 東西冷戦の崩壊で日本は国家としての指針を失ったと言われる。国連大使を務めた小和田恒氏が言う「人工的保護膜」がなくなった冷戦崩壊後の状況に直面して、政府は態勢づくりを急いでいる。

 米国が言う日米同盟の重要性は、沖縄抜きにあり得ない。日米安保上、在沖米軍の位置付けに変化を期待するのは無理なのだろうか。だが沖縄で相次ぐ米兵による事件・事故に代表される基地被害のうっ積は、いつ爆発するかもしれないマグマだまりに似ている。沖縄サミットが閉幕して、懸案の普天間飛行場の移設や、代替施設の使用期限十五年問題がどう展開するのか。その答えは見つけにくい。
200023日付)