雑記帳
◎これが日本の政治の現実だ!

 懸案置き去り相変わらずの権力闘争

 全くもって腹立たしい限りだ。
 
野田首相に対する問責決議が参院で可決されて野党は一切の審議を拒否し、今国会は先月末から事実上の開店休業状態となっている。会期末は今月8日だが、今や民主も自民も目前に迫った党代表選、総裁選で頭がいっぱいで、国会のことなど構ってはいられないといった風である。
 決議案に法的な拘束力はない。可決されたからといって、野田首相は辞めなければならないわけではないが、自民党政権時代の2008年に福田首相、2009年に麻生首相に対する問責決議案が可決されている。福田氏は3カ月後に総辞職、麻生氏は1週間後に解散に打って出たが総選挙で大敗、民主党政権が誕生した。問責決議は政権の命運を決めるものだ。「法的拘束力がない」などと言って済むものではない。
 野田首相は否応なしに総選挙の洗礼を受けなければならない。もはや来年までの任期いっぱい政権を維持することなどできない。秋の臨時国会で解散、11月には総選挙となるのは間違いなさそうだ。
 国会議員が職場放棄して国会が「寝て」しまえば、国民の生活に影響のある今年度予算の執行もままならない。財源となる公債発行法案が野ざらしとなり、最高裁に「違憲」と烙印を押された一票の格差を是正する選挙制度改革法案といった重要法案が放置されただけでない。野田政権が国会に提案した法案は僅かに5割を少し超えただけが成立しただけのありさまだ。
 こんな事態になったことを政権は首相問責決議案を出した野党のせいにするし、野党も政権の不誠実をなじるだけで肝心の国民のことなどそっちのけのケンカ三昧である。
  元はといえば、政権がねじれ国会で成立のめども立たない選挙制度改革法案を一方的に衆院で可決したしたことが決定的だった。まさに、口とは裏腹に政権延命のため自公両党との信義≠裏切り、「問責決議」を出させるよう仕向けたも同じである。

          

 与野党とももっともなことを言っているようだが、一皮むけば党利党略以外の何ものでもない。
 こんな状態では民主、自民、公明の3党合意などはどうなってしまうのか。
 「合意の精神は残っている」「合意など消えてしまった」と与野党幹部は吠えまくっているが、そもそも民主、自民、公明3党の合意とは一体何なのかである。
 3党合意とその後の8月上旬に行われた野田・谷垣両氏による民自両党首の会談は、野田政権が「政治生命をかける」と気負った社会保障と税の一体改革を通すための「手打ち」だった。その裏に「近いうちの解散」で意を通じたから他野党が突きつけた内閣不信任、首相問責決議案を葬り去ったのだが、いざ法案が成立してしまうと、首相が約束したはずの「近いうちの解散」はいつの間にか曖昧になってしまった。
 首相は自らに帰す解散権を安易に口にできないから「近いうちに」と言って協力を求めたのだろうし、一方の谷垣氏も首相の立場を慮って「近いうちに」を好意的に早とちりしてしまったのか。
 谷垣氏にすればせっかくの好意を無視されたのだから激怒するのも無理はない。振り上げたこぶしを下ろせなくなって首相問責決議案を出したのだが、他野党の協力が得られず独自の決議案を国会に上程できなかった。盟友の公明党もそっぽを向いてしまった。
 自民はやむなく他野党の問責決議案に相乗りして首相問責にたどり着いたというわけである。いかにも分かりにくい自民の行動だったが、この迷走で谷垣氏はすっかり男を下げてしまった。

 首相問責の可決で、今となっては一体改革などは名ばかりとなってしまったし、単に消費増税を決めただけで国会は終わってしまった。3・11大震災の復旧・復興はいまだに方向性が見えてこない八方塞がりの状態だ。被災地の人たちの我慢はとっくに限界を越えた。にもかかわらず、政治の温かい手は一向に伸びてこない。
 そんなところに尖閣、竹島の領土問題が飛び込んできた。機能しない国政が的確な対応をするわけがない。国民にとっては最悪の現実である。

            

 ところで民主党の代表選と自民党の総裁選である。
 民主党の「野田再選」は動かないようだが、民主党の創設者の鳩山元首相は意地でも対抗馬を立てようと動いている。小沢グループが民主党を離れて「国民の生活が第一」を結党したからかつてのような波乱要因はなくなったが、それでも反消費増税、反TPPの議員は無視できない勢力として党内に残っている。
 離党せずに「生活」とは一線を画した議員グループだが、今後の政局の動き次第では反旗を翻すかもしれない。
 民主党議員にとって最も不安なのは、秋にも予想される解散、総選挙である。現執行部には選挙を仕切れるような知恵者・戦略家はどこを見渡してもいない。政権党でありながら、全選挙区に候補者を擁立できないと疑われている。
 拠りどころをなくした、彷徨える議員たちは数え切れないほどいる。早々と見限って「大阪維新の会」の門をくぐった議員もいる。離党のなだれ現象は続くだろう。
 一方の自民党は現総裁の谷垣氏の力量が問われ、安倍元首相や元官房長官で町村派会長の町村氏が総裁選に強い意欲を表明している。他にも石原幹事長や石破元防衛相の名も取りざたされ混戦模様だ。

 自民党にとって次の総裁選は、3年前の下野した当時のそれとは全く違う。
 民主党政権は救い難いほど求心力を失っており、今では政党支持率でも自民党に大きく差をつけられている。総選挙となれば民主党政権に幕が下りるのは間違いないだろう。その分だけ自民党の政権奪取の機会が近づいたと言える。つまり、今度の自民党総裁選は首相を選ぶに等しい。野党時代の総裁選とは全く意味が違う。

 安倍元首相が「デフレ脱却」を掲げて総裁選に事実上名乗りを上げたが、それも2007年9月の不名誉な退陣からの「再起」を目指したからだ。
 安倍政権は2007年夏以降、「消えた年金」「テロ特措法」などの問題で行き詰まり、参院選で惨敗しながら臨時国会で堂々と所信表明演説をしている。ところが、その直後に辞任したのである。安倍氏の辞任は「健康問題」も大きな理由だった。
 所信表明をしながら直後に退陣したことで「敵前逃亡」「政権放り投げ」などと厳しく批判された。その名誉挽回なのか、あるいは生まれ変わった自分を披瀝したいのか。

 (注)安倍政権の末期は「尾形宣夫のホームページ『鎌倉日誌』」の「政治と行政」ABを参考にしてください。

 安倍氏は自民党の町村派に属する。その派閥の会長の町村氏も総裁選出馬を明言した。同じ町村派から2人が総裁選に名乗りを上げたことは、自民党の流動化を表している。
 東京・永田町は、どこを見ても「政治」が機能していない。相変わらず脱皮できない政党集団の居住区である。

尾形宣夫のホームページ「鎌倉日誌」