雑記帳

2011年7月24日

◎継続的なボランティアの支援が欠かせない

東日本大震災発生から4カ月半,被災地にもようやく復旧・復興の槌音が聞こえるようになった。だが、大津波にさらわれ街中を埋め尽くした様々な瓦礫はところどころにまとめられただけで、処理しなければならない膨大な量の粗大ごみはいたるところに山積みされたままである。
 復旧・復興の動きは確かに表れ始めたが、一方で、避難民が不自由な生活を強いられている現実に変わりはない。
 特に、大地震・津波被害に加えて原発事故に襲われた福島県は復旧・復興どころではない。放射性物質という見えない恐怖に脅えながらの生活は、馴染み親しんだ故郷を遠くに追いやり、手塩にかけて育てた家畜は泣く泣く手放さざるをえなくなった。汗と努力の結晶でもある農地は荒れるに任せたままで雑草が背丈程にも伸びている。
 復旧・復興の声は聞こえるが、それは目指そうにも手の届かないところにある。今は原発事故収束がどうなるか、目前の問題に向き合わなければならないという厳しい現実が立ちはだかっている。宮城、岩手両県とは真逆の境遇に置かれたままだ。

 今度の大震災で被災地・被災者の秩序立った行動と、被災地支援に世界は驚嘆の声を発した。効率化が進み温かみが少なくなった世の中と思われていたが、日本人特有の他人を、地域をおもんばかる連帯感、絆は生きていた。その血の通った手が差し伸べられたことを喜びたい。

災害規模の大きさから考えれば世界的規模の支援・救済は当然ともいえるが、NGO,NPOといった組織的な支援とは別に、一般の人たちによるボランティア活動が被災地の交通条件の悪さにも関わらず、世代を超えて大勢の人たちが駆けつけてくれたことだろう。
 だが、日を経るごとにやって来るボランティアの数が減っている。緒に就いたばかりの復旧にボランティアが果たせる役割は大きいし、行政レベルとは違った個々の被災者へのきめ細かな「手伝い」ができるのは彼らたちの得意とするところだ。
 全国社会福祉協議会(社協)のまとめだと、震災日から3カ月半に延べ48万人のボランティアが支援に駆けつけた。5月の大型連休は1日当たり1万1500人、6月の週末は約6千人、平日は約3千人だった。
 ところが社協よると、延べ数は阪神大震災の約4割にとどまっている。ボランティア数(延べ)を1カ月単位で見ると下図のようになっている。阪神大震災のそれは、5カ月以後も120万〜130万人台で推移している。

 

  「東日本」が「阪神」に比べてボランティア数が少ないのは、東日本大震災が被災地を結ぶ幹線交通網を断絶させ、さらに内陸部の道路、鉄道の幹線と沿岸域の被災地を結ぶ交通網をズタズタに壊してしまい、ボランティアが駆けつけようにも駆けつけられず、震災直後の救援が大きく出遅れてしまったことが大きい。図を見れば、初動の遅れがはっきりしている。
 もう一つの理由は、被災地側にボランティアの受け入れ態勢が十分できなかったからだ。
 被災地域が東日本の太平洋岸一帯の広域にわたり、中には自治体そのものも消滅した。自治体、つまり市役所や町村役場がなくなり、九死に一生を得た職員は、何から手をつけていいのか分からない状態の中で、多くのボランティアを迎えざるを得なかった。ボランティアに何を頼み、どのような役割をしてもらうかさえもできない状態だったのである。仕事を割り振る行政の機能がマヒしていた。このため仕事を求めるボランティアが長い行列をつくるという光景が各地で見られた。
 かろうじて行政機能を残した自治体であっても、態勢が混乱し被災地・者救援に求める支援の内容とボランティアが手伝おうとする仕事のミスマッチが多かったようだ。つまり、地理的条件の悪さに加えて救援に駆けつけたボランティアの力を活用する条件ができていなかったということである。

 
大規模な機械力を使った復旧対策で自治体の中には「ボランティアで対応できるニーズは収束しつつある」として、宮城県の石巻、岩沼、名取、多賀城などの各市は7月から県外ボランティアの募集を断ったり、団体やグループのみに限定することになった。
 だが社協によると、「ボランティアにできる仕事はいくらでもあり、まさにこれからがボランティアを最も必要とする時期になる」と語っている。
 震災からの復興の主体は被災者と被災地域の自治体であることはそのとおりだが、多くの被災者にボランティアの支えが必要なことは言うまでもない。阪神大震災に比べると、支援に駆けつけるボランティアの数は上図で分かるように半分程度にとどまっている。被災地にアクセスしにくい条件の悪さを考えると、今後ともボランティアが急伸することは期待できない。
 だが社協が指摘するようにボランティアの力は大きく、その支援が継続的に行われなければ、未曾有の大震災からのきめ細かな復旧・復興はむずかしいのではないだろうか。

 一部を除き交通網が元どおりになりつつある現在、被災自治体とボランティアのミスマッチがあるなら、まずそれをなくすことから始めてはどうか。
 
被災民に取っても行政では気付かない日常的な細かな要望をボランティアに託し、解決していくことが求められていると思う。要は、被災者が何を求め、それにどう応えるか。
 東日本大震災の復旧・復興はこれからが本番である。それをわきまえてこそ、官民一体となった「よみがえれ東日本」が本物となる。

(尾形宣夫のホームページ「鎌倉日誌」)