雑記帳

2011年6月19日

◎大震災から100日(ブログ)=(1)

=国民を裏切る政治空白=

 「この国は一体、どうなるのだろう」と国民の大多数が思っているに違いない。
 未曾有の大震災に見舞われ、東電福島第一原発で爆発・炉心溶融(メルトダウン)が連続して起きた信じ難い原発事故で、私たちはこの世の地獄を見てしまった。そして被災地の地獄絵図は日本列島の青森から岩手、宮城、福島県に至る東日本太平洋沿岸地域から茨城、千葉県など関東・首都圏にまで広がっている。
 さまよえる被災地の人たちは全国各地に生活の居を移し、慣れない土地での不自由な生活を強いられている。頼るべき親族がいる人は、それでも幾分のくつろぎを味わうことができるかもしれない。だが、寄る辺のない人たちは一時的に身を置いた避難先も期限がきて、また別の場所に移っている。
 広い体育館や集会所に身を寄せた人たちは、今も狭く仕切られた空間でプライバシーのない日常を送っている。

 「3・11」から100日がたった。

復旧・復興の掛け声は聞こえるが、瓦礫に覆われた被災地の惨状は少しも変わっていない。死亡は15,457人、行方不明はいまだに7,676人(18日現在)を数える。
 被災地・被災民への支援は国内だけでなく、遠い外国からも届いている。政治も行政も、全力を挙げて事に向き合っている。被災地の中には岩手県大槌町のように役場がなくなった「行政が消えた」ところもある。
 だが、政府の復旧・復興対策は驚くほど進んでいない。
 早期退陣を明言しながら、「私の責任」と次から次と言い出す菅首相の震災対応は、国民の目には政権延命としか映らない。この、思考停止の状態から抜け出すのはいつのことか。野党が猛反発するのは当然だが、民主党内だけでなく、閣内でも首相独走を戒める声が大きくなっている。

■強気に転じた首相

 私は6日付のブログで「大連立に大義はあるか」と問題提起した。中央大手各紙が特定の政治家名を挙げて、暗礁に乗り上げた震災対応の打開に与野党間で言われだした大連立を後押しするような論調が大きくなったことへの疑問からだ。そして10日付で政治の常道を裏切る権力欲」=「退陣表明」から1週間=で、大連立の危うさを指摘した。
 その後、政局がどう動いたかは周知のとおりである。
 大連立論が急速にしぼみ、代わって菅首相が震災対応の第2次補正予算の必要性をさらに声高に言い出し、さらに12日には官邸で開いた有識者との懇談会では「自然エネルギー推進機構」とか「エネルギー推進庁」といった具体的な名前を挙げて、新機関の設置に意欲を示した。
 首相の政権持続の意欲はさらにエスカレートする。「2次補正」が財源問題等で先行き困難と見るや、「1次補正で積み残しになった被災者の二重債務など」に緊急に対応する15次補正」に切り替え、さらにはほとんど進んでいない被災地の瓦礫撤去への早期対処も「私の責任」などと次々と課題を披瀝した。

 15日 付の大手紙朝刊各紙の紙面は、それまでの菅首相の退陣一色だった政局に勢いがなくなってきた様子がよく表れていた。
 クセ球の「1・5次補正予算」に野党は反発して見せるが、かといってそれ以上の攻め弾がない。そんな調子だから「首相の月内退陣しぼむ…会期60〜90日延長も」(読売)と書かれてしまう。
 なぜ、こんな状況になってしまったのか。答えは簡単だ。要するに首相を何が何でも引きずり落とす大義名分が色あせ、野党の足並みもそろわない実体が露呈してしまったからだ。民主党内も内閣不信任決議案をめぐるゴタゴタが尾を引き、グループからの離脱が表れる始末で小鳩路線の先行きは不透明になっている。
 だから、首相も国会で「いつ辞めるなどと言うものではない」という強気な発言をして平然としている。
 こんなありさまだから、原発事故や沖縄・普天間問題という超難物がありながら無策な内閣が倒れない。これでは政治不信が高まるのは当たり前だが、マスコミは政局を紹介するだけで、その先を示してくれない。国民も声を大にして怒りを表さないことには何も変わらないと思うのだが、いたって涼しい顔で政局を見ているだけだ。(続く)

(尾形宣夫のホームページ「鎌倉日誌」)