雑記帳

2011年2月14日

【小沢処分のバランスシート】(ブログ)

◎アリバイづくりに終始した執行部

民主党役員会が小沢元代表の党員資格停止を決め、15日の常任幹事会と党倫理委員会で正式決定する。岡田幹事長は「公党としての責任」というが、自縄自縛の結論と言った方がいい。政治とカネの問題は厳しい世論と攻勢を強める野党に挟まれて、一体であるべき党内が小沢系グループの抵抗で収拾がつかない。執行部としては落としどころを探すが妙案はなく、ひたすら小沢氏が自発的に国会で弁明の場に出るよう説得しようとしたがいずれも相手にされなかった。

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菅首相にとって、小沢元代表に対する党員資格停止のプラス、マイナスを考えてみよう。
 プラス要因としては「政治とカネ」についての国民の厳しい批判に応え、野党攻勢に対しても最低限のけじめをつけたと弁解できるかもしれない。幹事長が言う「公党の責任」の論拠である。
 逆にマイナスとなるのは、9月の党代表選以来大きな議論になりながら党執行部が機敏に問題処理ができず、結論をずるずると延ばしてしまった力量不足が浮き彫りになったこと。しかも、下した決定が処分としては最も軽いから、世論は評価しないだろうし、勢いづく野党の攻勢を跳ね除けるには程遠い。
 しかも、民主党内の小沢系グループとの亀裂を決定的としたことは、これからの政権運営を極めて難しくしてしまった。菅内閣の政権運営のバランスシートは、経営危機に瀕した企業の財務内容と同じだ。

今回の決定は党代表選以来の小沢問題追及の帰結だが、どう見ても執行部自らが墓穴を掘ったように見えてくる。政倫審出席で小沢氏に門前払いを食わされ、一時は証人喚問も考えたが民主に利あらずが分かり、かといって引き下がるわけにもいかず、どうにか処分の形を整えたにすぎない。いわば、強制起訴を後押しする「世論」と野党を横にらみした菅・岡田執行部の「アリバイづくり」だ。
 このアリバイづくりが菅・岡田体制にとんでもない重荷となることを覚悟したのだろうか。内閣改造で少しばかり持ち直した内閣支持率はここに来て再び急落、各種世論調査でも20%前後と危機ラインに戻った。マニフェストの大幅な見直し、愛知知事選、名古屋市長選での大敗は地方選連敗をさらに深刻なものとした。もはや、統一地方選は菅首相の下では戦えないという声が高まっている現実をどうみているのだろうか。
 通常国会最大の懸案である来年度予算案、および予算関連法案の3月中の本年度内可決に赤信号が灯った。衆参両院のねじれ解消を狙って秋波を送り続けた最後の頼みとする社民党からは、関連法案6項目の修正要求を突きつけられたからだ。
 もはや菅首相には、唯一とも言える「小沢攻撃」のメリットが得点につながらないことがはっきりした。政策面で攻勢に出ようとしても、マニフェストが足かせになって前進を阻んでいる。予算関連法案を「細切れ」にして野党の審議参加を促そうとするなど、政権党とは思えないような次元の低い国会対策を始めている。
 何度も指摘したが、首相自身に政策がないだけでない。政治理念そのものを欠いた言動は、世に言う「経綸」のかけらもない。思いついたように飛び出す「消費税発言」や「TPP参加検討」がどれほど重大な問題を抱えているのか、その認識を示さないまま、言葉だけが独り歩きしている。
 加えて岡田幹事長の原則にこだわる政治性のなさは、官僚の発想の域をいまだに脱しきれないままだ。

首相は昨年秋、「これまでは仮免許だった。これからは本免許(で政権運営する)」と豪語したが、残念ながら内政、外交ともいまだに仮免状態であることがはっきりしている。政権保持のため、理念も原則も政策も脇に置いたまま汲々とする菅内閣に展望はない。国民が何を求めているのか分からない内閣が陣取る東京・永田町には、政権交代の熱気はもはやない。あるのは、さまよえる菅政治だけである。

(尾形宣夫のホームページ「鎌倉日誌」)