【出先機関統廃合】

◎首相の本気度が試される

(注)【政治と行政】
「ぶれ続く首相―裏目、裏目のトップダウン」参照

 麻生太郎首相は各閣僚に対し、地方分権改革の主要な柱となる国の出先機関の統廃合を、積極的に進めるよう指示した。これに先立ち首相は、地方分権改革推進委員会の丹羽宇一郎委員長を首相官邸に呼び、出先機関の根本的な見直しを行うよう求めている。
 丹羽氏は記者団に、首相の言葉を紹介しながら「基本的に廃止の方向で検討することに同意をいただいた」と語った。
 分権改革の行方を占う意味でも、首相の意欲は好ましい。だが、首相は直後に「廃止というのではなく、統廃合を指示した」と言い直した。
 「廃止」と「統廃合」では当の霞が関での受け止め方は全く異なる。首相の言葉尻をとらえるわけではないが、もっと明確に決意を表してもらわないと政治主導は期待できない。

 地方農政局と地方整備局をどう扱うかは、国の出先機関見直しの成否を占う最重要課題だ。首相が、霞が関の官僚と族議員の強い抵抗が明らかな出先機関を問題にしたのは、十月末の追加経済対策発表の際に示した「三年後の消費税率引き上げ」の前提として、大胆な行政改革に言及する必要があったからだ。
 出先機関を見る国民の目は厳しい。北海道開発局の談合事件、道路特定財源の流用、さらに農政事務所が見過ごした汚染米事件といった事例は、国民の行政不信を一段と高めさせ、政権不信を招いている。
 分権改革委は年末にも首相に提出する第二次勧告で、農林水産省や国土交通省など八府省・十五機関を対象に、事務や権限の大幅見直しや、組織の統廃合を盛り込む方針だ。
 だが現状はどうか。国交省が都道府県と協議している直轄国道や一級河川についての権限移譲は、分権改革委が納得するには程遠い内容だ。農水省にいたってはほとんどゼロ回答である。
 つまり、両省の主張は組織の廃止につながる移譲は受け入れないということである。統廃合を弱め見直しにとどめれば、組織温存ができるというわけだ。
 結局、分権改革委としては政治力を使って各省の抵抗を突破するしかない。首相がその期待に応えることができるのか、首相の本気度が試されている。

 国家公務員三十三万人のうち二十一万人が国の出先機関に配置され、省庁の直轄事業や許認可事務などに当たっている。このうち地方整備局は二万二千人、地方農政局・農政事務所は一万五千人。予算規模(二〇〇五年度)でみると九兆二千数百億円に上る。
 出先機関と地方自治体との二重行政が各方面から指摘されている。こんな無駄を放置しておいていいはずがない。

(08年11月12日付)