政治と行政

◎仲井真再選の先に何が起きる

(2)基地と経済の連鎖は通用しない

 今回の知事選を振り返って感ずるのは、沖縄基地の現実である。
 北朝鮮の韓国・大延坪島に対する砲撃は、朝鮮半島の緊張状態を一気に加速させた。米韓両軍の合同演習が北朝鮮の目の前の黄海で始まったが、今や朝鮮半島は誰の目にも「臨戦態勢」と映る。
 この緊急事態で沖縄米軍基地の存在がクローズアップされたのは当然で、この事態が県民に沖縄の現実を改めて突きつけたことは否定できないし、知事選に影響しなかったとは、とても言えない。経済振興問題もさることながら、国との間で決定的な対立を避けた県民の心理に砲撃事件が働いたことは否定できない。
 言うならば、県民は否応なしに現実を認めざるを得ない立場に追い込まれたと捉えるべきだろう。

 前述したように、仲井真知事は「(移設の)県内はない」と明言した。菅首相は近く沖縄県を訪問、知事に辺野古移設で協力するよう懇願する考えのようだ。会談がセットされたとしても、現時点では知事はこれに応える気は全くなく、県外の他地域への移設を強く迫ることは確実だ。しかし、首相は「日米合意の順守」を再三言っているのだから、互いの接点はない。政府と沖縄の話し合いがあったとしても、早めの結論は期待できない。長期化は必至だ。
 となると、問題は間違いなく政局に結びつく。重要法案を山積みにしたまま臨時国会は間もなく終わる。来年1月の通常国会は、来年度予算審議を核に与野党の対決は火を噴くはずだ。普天間問題がこれに加わり、政局は大揺れになるかもしれない。
 普天間問題は当然、日米関係に響く。砲撃事件の中で、日米同盟の質的問題が改めて問われるはずだ。菅内閣はこの危機的な状況にどのように向き合い、乗り越えようとするのか。政権の先行きと絡めて目が離せない状況が続くだろう。

再選された仲井真知事は現実的な県政を運営してきた。普天間問題でも当初は、辺野古移設に賛成ではなかったが必ずしも「反対」の立場を打ち出さなかった。そこに民主党政権が取り入る余地があったのだが、沖縄の民意が「県内移設反対」一色になったことで、仲井真知事の「現実的対応」は不可能になった。
 「基地と経済」を量りにかけた政府の沖縄政策の限界がはっきりした。もはや、わずかばかりの恩恵で沖縄が政府の言い分を受け入れる時期は去ったと考えるべきだ。
 沖縄問題の本質は、沖縄の地政学的で、戦略的な位置づけを認めるか否かという高度な政治問題ではない。県民の日常を脅かす基地を生活の周りから取り除いてほしいという、極めて単純な願いである。
 基地と県民生活を量りにかけるだけでは、戦後65年、本土復帰から40年になろうとする「沖縄問題」は解決しない。「新しい秤」を考え出して、「沖縄」を考え直す時期が来ていると思う。

101129日)=尾形宣夫のホームページ「鎌倉日誌」