政治と行政

【沖縄知事選】

◎仲井真再選の先に何が起きる

(1)政権と沖縄に重大な選択迫る

 28日の沖縄知事選(開票最終)は

 当選 仲井真弘多 (公・みんな)        335,708
    伊波 洋一 (共、社、国、新日、社大、そ)297,082
      金城 竜郎 (幸)             13,116

 現職である仲井真氏の再選は、沖縄県民が政府との決定的な対立を避ける選択をしたということだ。
 選挙結果について福山官房副長官は「沖縄県民の民意の一つの表れ」と言ったが、この民意は「一つの表れ」などという単純なものではない。国と沖縄の対立、そして政局への連動となり、長期的には日米関係への影響は避けられない極めて重大な結論である。同時に、仲井真氏にとっても「逃げ」のきかない県政を託されたと考えるべきだろう
 残念ながら、菅首相にはこうした事態に対処できる処方せんを持ち合わせていない。知恵がないと言っていい。

 仲井真氏は再選の心境を問われて「県内はない」と、日米両政府が合意した普天間飛行場の辺野古移設案を否定した。同氏は、対立候補だった伊波氏が主張した「国外移設」とは言っていない。日米同盟に基地が必要というなら、沖縄に押し付けるのではなく国内のどこかに移設先を見出すべきだと強調してきた。
 今年1月の名護市長選、そして先の名護市議選と地元は辺野古移設案を全面的に拒否した。これを受けて、仲井真知事も「県内はない」と県内移設に明確に反対を表明した。
 つまり、事実上の一騎打ちとなった今回の知事選で「普天間移設」は争点ではなかったのである。沖縄の選挙で「基地」が争点とならなかったのは珍しいというより、異例だった。
 鳩山前首相の「最低でも県外移設」がぬか喜びであったことで、県民の民主党不信は頂点に達した。政権を引き継いだ菅首相も「日米合意が基本」とし、再選された仲井真氏に直接協力を求める意向だが、知事としては今さら「そうですか」とは言えない。県民が許さないだろう。

 「普天間」が争点でなくなったことで浮上したのが、沖縄の本土復帰以来の「沖縄振興特別措置法」である。同法は1年半後に期限切れとなり、その延長と中身をめぐって詰めの論議が続いている。民主党政権は特措法延長で沖縄県の歓心を買おうとしているが、もはや旧政権時のような「基地と振興策」の取り引きが出来なくなったことは自明の理である。
 さらに決定的なのは、振興策が沖縄の経済的な底上げ、自立につながらなかったという現実である。県民所得は全国最下位であり、全国平均の7割に過ぎない。沖縄経済を支える「3K」(公共事業、観光、基地)の中でも、公共事業が持つウエートは大きい。だが、その公共事業も県民に等しく恩恵をもたらしていない。軍用地料も年々増額されるが、経済効果は限られている。
 だが、こうした現実は沖縄振興特措法があってのことで、特措法がなくなることはあり得ないが、国の財政の窮状を見る限り、特措法をテコとした沖縄経済の強化は想定できない。(続く)=尾形宣夫