【続・定額給付金=自治体猛反発】

◎首相は後始末をつけよ

 定額給付金をめぐる迷走は日を追うごとに激しくなっている。迷走というより、飛行機が横揺れと横滑りを繰り返し、左右に蛇行するダッチロールと言った方が正確かもしれない。河村官房長官が各閣僚に発言に気をつけるよう注意喚起しても、閣内不統一ぶりは収まらない。地方自治体の首長の政府批判は、まさに燎原の火の如しである。
 「無責任」「無策」「コメントする気にもなれない」―各首長や知事を経験した大学教授らが、こう突き放した言い方をするのだから、国民の人気取りを狙った定額給付金は「愚策」の烙印を押されたようなものだ。
 当の麻生首相は、金融危機の対策を話し合う米国ワシントンでの新興国も交えた金融サミットに参加しているが、国内の混乱を聞かされてもなお「自治体に任せるのだから地方分権」と平然としているようだ。会議を終えて帰国したらどんなことを言うつもりなのだろうか。

 定額給付金の処理を自治体に丸投げしたことが「地方分権だから」と言い放った首相の分権改革に対する認識を13日の本稿でも指摘した。
 前回は、それでも側近に分権の力強いスタッフを据えた意欲をある程度評価した。ところが、首相の分権観がこうもおかしな走りを始めると、せっかく分権改革の体制を整えながら、トップが辺り構わず独り歩きしてかき回している感を深くせざるを得ない。
 改革派知事と言われた複数の大学教授は、笑いながら「首相は地方分権の意味を知っているのでしょうか。とてもそうとは思えない」「いや、本当は知らないのではないか」とさえ言っている。
 小泉改革の理論的役割を果たした教授は、「無責任」と切り捨てている。

 今回の問題を少し違った観点から言えば、「国」対「地方」に短絡されていると言うこともできる。
 つまり、定額給付金をめぐる閣内不統一、与党内のバラバラな主張は「国」の中で十分な議論がなされていないまま結論が出されたことである。そして、丸投げされた。
 一方の地方においても賛否両論があり、評価する声もないわけではない。経済対策なのか、生活支援策なのかも明確でない。総合経済対策で首相が得意満面言ったのだから経済対策なのだが、給付の基準が右往左往したものだから、バラマキとなってしまった。
 自治体が怒っているのは、明確な基準を示さないまま「自主的に判断してくれ」と言わんばかりの丸投げだったからだ。
 地方分権は、施策について国も自治体も十分議論を重ねた上で互いの役割をはっきりさせることである。この手続きがないだけでなく、足元を固めないまま定額給付金が独り歩きしてしまった。
 何のことはない。その種をまいたのは麻生首相である。首相は言い放っしにしないで、後始末をきちんとつけなければなるまい。

081115日)