【天気と政局】

◎何も彼もがおかしい、この現実

 今朝の日本列島は、秋を通り越して一気に冬に入った感があった。北海道から西日本各地まで雪が舞い、酷暑で忘れかけていた冬将軍が季節どおりやってきた。慌てて、タンスやクローゼットから冬物衣装を取り出した人も多かっただろう。
 季節の移り変わりに馴れたはずの私たちだが、今年の気象の異常さには心底参った。観測史上例のないような酷暑が続いたと思ったら、ものすごい豪雨が各地を襲った。時間雨量が100_を越す、天の底が抜けたのではないかと思わせるような、例えようのない雨に削られた山は、巨大なスコップでごっそり取られたような無残な地肌をさらした。
 異常な暑さと雨は農作物にも深刻な影響をもたらした。レタスや白菜、キャベツなどの葉物は、いつもの3〜4倍もの値上がりで台所を直撃した。

 異常気象のせいでもあるまいが、日本の政治も狂いっぱなしだった。「世の中が私の言うことを聞かなくなってしまった」と言って辞めたのが鳩山前首相。代わって登場した菅首相は、何を勘∴痰「したのか参院選直前に「消費税引き上げ」を言い出し、結果は惨敗の憂き目に。
 その菅首相が小沢前幹事長と民主党代表選を争い、「小沢嫌い」の世論を追い風に晴れて代表ポストをものにした。ところが首相は、もともと政策に明るい政治家ではない。やること、なすことがうまくいかず、「カラ菅」などと一国の首相に対し口にできないような悪口を浴びせられ続け、いまだに迷走の毎日だ。
 尖閣諸島海域で、中国漁船がわが国の巡視船に体当たりした事件の処理をめぐる政府の対応は、外交無策を絵に描いたような体たらくだった。
 天気と政局とは何の因果関係があるわけではないが、予想もできない気象と政治の転換期の混乱がどこかで結びついているのではないかと思わせるようなこの数カ月である。

 「政治とカネ」――これが民主党政権発足以来引きずっている不愉快なお荷物だ。クリーンな政治を野党に転落した自民党から攻撃されるのも皮肉な巡りあわせだが、果たして国民の本音はどうなのか。
 新聞各紙やテレビ各局の世論調査は、国民が「政治とカネ」の不透明さを厳しく問い詰めていると何度も伝えている。鳩山前首相や小沢元幹事長にまつわる政治資金問題は、両氏が十分説明していないため相変わらず、大きな問題として立ちはだかったままだ。
 一方で世論調査は、不況・雇用問題に国民が大きな不安を抱いている事実を指摘している。
 国民が「最も解決して欲しい」と願っているのは景気問題であり、雇用不安からの脱却だ。ところがその処方せんは、米国や欧州各国の経済不振に引きずれれているため出口がどこにあるのかさえ見い出せないでいる。


 このところの外国為替市場での円高は、信認が低下しているドルやユーロに比べると、相対的にリスクが小さいという理由で円が買われているだけの現象である。円が信認されているわけではない。この円高はわが国の経済を直撃しているのは誰もが知っている。先進各国が自国経済の立て直しに邁進せざるを得ない状況では、各国が協調して通貨の安定、経済立て直しにあたることは期待できない。
 日本は手を打とうにも、打てないのが現実である。政治も経済も、何も彼もがおかしくなっている。

101027日)=尾形宣夫のホームページ「鎌倉日誌」