「国と地方の協議の場」(10年夏季号)総合リード

◎国と地方の協議の場

 地域主権改革に暗雲が垂れ込めている。菅直人政権が喫緊の課題としているのは「財政再建」。前政権からの引継ぎ事項といっても、地域主権に対する関心は、さほど高くない。
 通常国会の閉幕で、全国知事会など地方6団体が期待していた「国と地方の協議の場」設置法案など地域主権関連3法は継続審議となった。地域主権戦略大綱は閣議決定まで持ち込んだが、今後の方向性を示しただけ。一括交付金、出先機関の見直しは今後の動きを見守るしかない。

「協議の場」の位置づけ、取り上げる問題をめぐって、内閣と地方は激しい議論を続けてきたが、それも、国と地方のパイプを太くするための前向きな議論だった。
 鳩山首相の辞任は、その流れを変えた。菅首相がこだわる「強い経済、強い財政、強い社会保障」は、緊急性から言えば「地域主権」を超える。国民新党代表の亀井郵政・金融担当相の辞任はあったが、菅政権としては、国民新との連立維持のため郵政改革法案の早期成立を急がねばならない。それに、参院選は目前に迫っている。そんな状況を考えれば、せめて「協議の場」設置法ができていれば、地域主権担当の原口総務相の再任で、いわゆる「原口プラン」のレールは走行可能だった。

 「協議の場」に向けた国と地方の議論はこれからも続くが、準備会議のメンバーが「地方の意見」をどこまで集約ができるか既に問題が表れている。「国と地方の協議の場」と言っても、内実は国と地方の関係、地方自治体同士の特殊事情を考えると、一筋縄ではいかない難しさがある。「地域主権」の解釈を巡る対立も浮き彫りとなるだろう。
 原口総務相の地域主権改革に対する言及が、前政権時よりトーンダウンしている。それが何を意味するのか。(編集長 尾形宣夫)