編集長コラム「国と地方」

◎女性町議

地方議会に女性議員の登場が目立つようになった。まだまだ全国的な傾向とは言い難いが、女性議員の誕生にはそれなりの理由がある。「男社会」のままでは地域住民の期待に応えることができなくなっている議会の現実。そして、そんな議会に新風を吹き込み自己改革につなげていくエネルギーとなっているのである。千葉市内で開かれた「町村議会議員特別セミナー」に呼ばれて聞いた女性議員の言葉に、地方議会の現実を見たような気がした。
 宮城県柴田町からセミナーに参加した6人のうち3人は女性。いずれも昨年3月の町議選で当選した、政治には素人の新人議員だ。合併問題や地域づくりに「頑張ってみよう」と決心した。
 その一人佐々木裕子さんはごく普通の主婦だったが、隣接2町との合併の動きに納得できず「合併反対」を有権者に訴えた。分権改革の時代を迎えて、自治体は合理化・効率化に四苦八苦している。体質強化の自己努力が足りない隣り町と一緒になることに我慢ならなかった。仮に合併して「市」になっても地域の人たちが幸せになるとは限らない、面積が広くなるだけ行政の目が隅々まで届きにくくなる―だった。
 高橋たい子さんは親代々の農業を営む。だが近年、佐々木さんが住む山あいの地区は元気がない。腰の定まらない農政のしわ寄せが随所に表れてきているのである。
 「地域づくりに努力してみたい」が議員を目指す心に火をつけた。農業の後継者不足が年々深刻になっていることも背景にあった。だから、豊かな農地を備えたコンパクトシティにも挑戦したかった、と言う。合併がうまくいっていない多くの事例も聞いていた。

 柴田町議会は18人の議員のうち女性議員は6人、議席の3分の1を占める。神奈川県大磯町議会の8人と並んで女性議員の占める割合が大きい。
 女性議員が注目されるのは、女性ならではの「感性」が所属政党や会派を超えて連携、福祉・医療、教育など身近な問題で、男性議員では見過ごされがちな「温かみ」や「やさしさ」が加わるからだ。女性議員の生活感覚が、政策や条例づくりに細かな配慮がなされるようになった効果は大きい。
 一方で、地方議会を見る住民の目は年々厳しくなっている。地域の問題を的確に把握し議論しているのか。政務調査費や研修目的の視察旅行がやり玉に挙がる例は多い。
 新人の女性町議が見た議会の印象は「質問をしない議員」「議論が少ない」(佐々木さん)だった。「質問しなければ(住民の)声は町当局に届かない」。だから「議会の中を変える」必要がある、だった。

 総務省の調査だと、市区町村議会議員のうち女性議員総数は3806人で、全体の108%を占める(平成201231日現在)。町村議会は1045人(7・8%)で市区議会(2761人、126%)には及ばない。女性比率が2ケタ台に乗せているのは市区議会が22都道府県。町村議会では9府県。町村議会は依然、男社会である。
 平成の大合併で町村数は激減した。代わって発足した「新市」は区域が広くなる一方、議会の定数は減らされ、個々の議員の責任は逆に重くなった。地方議員は「冬の時代」を迎えている。

(「地域政策」10年春季号)=尾形宣夫