【新党立ち上げ】

◎「地域政党」の役割は大きい

 「日本創新党」「大阪維新の会」「減税日本」といった首長らによる新党結成は、国政の混乱を見かねたものか。あるいは、自分たちの手で地方の自立を実現しようというものか、その背景、狙いは同じではない。
 地方では何かが起きている。政権交代があったとはいえ、今ではその新鮮味もなくなった。逆に、旧政権当時の手法と同じ轍を踏んでいるような事象さえ見えている。
 はっきりしているのは、中央政治が多様化した地域の求めに応えられなくなり、その限界が明確になったことによる必然的な地方の政治的蜂起ということである。
 中央集権的な仕組みにぶら下がっていれば事足りた時代は去った。地方分権か、あるいは地域主権なのか。言葉の意味づけに時間を割くのは大して意味はない。問題は国と地方を対峙させるだけでなく、地方における政治・行政と住民との関係をいかに深化させるかを模索することである。そのためには、地方政治が地域住民と真正面から向き合わなければならない。その大きな転換期が今やってきたということだ。

昨年8月、自民党を離党した渡辺喜美氏を中心とする「みんなの党」、そして今年4月の与謝野馨、平沼赳夫氏らによる「たちあがれ日本」、さらには世論調査で「首相にしたいナンバーワン」の舛添前厚労相を中心に旗揚げした「新党改革」は、いずれも自民党離党組や元自民党議員らによる新党だ。
 自民党改革と言えば聞こえはいいが、総選挙惨敗の反省もできずに国民に見放され、党内的にも求心力をなくした同党の四分五裂をさらけ出したにすぎない。特に「たちあがれ」と「改革」は政党要件を確保するため、肝心の基本政策の違いを包み隠した不思議な船出だった。
 こんな国政の惨状を見るに見かねて矢を射るようにできたのが、結成の狙いに違いはあるが首長らによる政治団体の発足である。
 「創新党」は東京都杉並区長の山田宏氏が代表で、前横浜市長の中田宏、前山形県知事の斎藤弘氏ら現職首長や首長経験者による新党だ。国会議員は1人も参加しない。「非永田町政党」がセールスポイントらしい。公職選挙法が定める政党の要件は満たしていないが、「国家、地方、国民の自立による自由で力強い日本をつくる」と強調、夏の参院選では5〜10人の当選を見込むと鼻息が荒い。
 「維新の会」は大阪府 橋下知事が代表で、府と大阪市を解体して「大阪都」を新設する 橋下構想実現のため立ち上げたローカル政党。「減税日本」は、「市民税の恒久的な減税」を公約に掲げる名古屋市の河村市長が、減税を認めない市議会の解散を視野に次の市議選で過半数の議席確保を目指している。
 政治改革を目指すことは創新党と同じだが、まずは足元の自治体改革に全力を投入する、文字通りの「地域政党」である。国政の混乱に乗じて東京・永田町に登場するのもいいが、今日的課題は地域がいかに元気を取り戻し、自立を図るかだ。そのために地域政党に何ができるのか。

「維新の会」と「減税」の目的は明確だし具体的だ。それに比べると、創新党のそれは、「成長と改革による経済と財政の再建」「国民の安心の確立」「現実主義に基づいた外交・防衛」と抽象的で具体性に欠ける。参院選は目前に迫っているにもかかわらず、誰が立候補するか口を濁している。パフォーマンスは派手だが、何をやりたいのか具体的に伝わってこない。
 「旧政権も現政権もばら撒きと人気取りに終始している」と言いながら、地方行政の問題点を熟知しているにもかかわらず、それを提示しないのは何とも解せない。

 地域政党が国政を変えるインパクトを担う時代が来ているようだ。政党ではないが、全国知事会が永田町・霞が関に物申すようになったのは、つい1年前に三重県伊勢市で開いた全国知事会議でのことである。このところの地域政党の産声は、地方政治が国政と対等に渡り合おうとする表れと言っていいかもしれない。
 地域の課題は多様だ。だから、全国的な次元で地域問題を明確にすることはできない。地方政治が活性化するためには、首長と議会の緊張関係が欠かせない。「国と地方の協議の場」も具体的に動き出した。抽象的な政治論ではなく、「協議の場」を先取りする動きがあっていい。
 創新党の持ち味は、そういった分野で力を発揮できるはずだし、「非永田町政党」を売りにするよりも、自らの経験を生かす処方せんを示すことが今日的課題なのである。
 創新党は「応援首長連合」のメンバーとして20数人の首長が名を連ねているが、メンバーがどのような支援をするか明確でない。既成の政党に加えて自民党からの離脱組が参戦する夏の参院選新党の存在をかける。既成政党と同じ土俵で戦っても勝ち目はない。

10430日)