2010330

【首相の資質】(ブログ)

◎独り善がりを憂う

 鳩山首相が明言した3月中の普天間飛行場移設案取りまとめがまたもブレた。ついこの前、「3月中に一つにまとめる。約束する」と言ったばかりなのに、29日夜になって、「別に法的に決まっているわけじゃない」と語った。テレビニュースでも報じられたから、バツ悪そうな表情で応えた首相の画像を見た人は多いはずだ。
 自民党ならずとも、いとも簡単に前言を翻す首相の言い方には唖然とさせられてしまう。普天間の「県外・国外移設」も所詮は、そんなことかと思わざるを得ない。
 首相発言は、28日に訪米した岡田外相が、「3月末という話は閣僚間でしていない」と語り、首相の考えとの違いを記者団に問われて返ってきた言葉である。
 政府案を一つに絞って米国や沖縄、さらには国内移設候補地と目される自治体の説得に全力を尽くすのが首相の考えだ。一方で、政府案を一つに絞ってしまうと、米国や移設候補地との関係がこじれた場合、移設案そのものがなくなってしまう可能性も高い。外相の懸念はそこにある。
 米政府、沖縄県、それに移設候補地の自治体など、普天間飛行場の移設問題は多方面との厳しい折衝が待ち受けている。それだけに、多様な場面に柔軟に応えられる複数の青写真を準備する必要があるだろう。応えを一つに絞って提示することは、よほどの自信がなければやるべきではない。
 もともと、「3月中の結論」は閣内で統一された考えでも方針でもない。にもかかわらず、それを「約束する」とまで首相が言い切る根拠は何なのか。「5月末までの最終決着」から逆算して「3月中の取りまとめ」が必要だと判断したのだろう。時間が経つごとに、首相の独り善がりが明らかになってきたようだ。

自民党政権が米国と合意した現行案を白紙に戻し、新たな移設候補地を探すことが短期間でできるはずがないことは誰の目にも明らかだ。現在想定されるキャンプ・シュワブ内の陸上案、ヘリ部隊の本土への分散移転、米軍ホワイト・ビーチのある勝連半島沖合に人工島を造成する計画を具体化しようとしても、工事着手までに途方もない時間を要するだろう。
 結局その間、普天間基地は現状のままだし、海兵隊のグアム移転は棚上げ状態となって将来設計のファイルに綴じられるだけだ。
 本欄で鳩山首相の言葉の軽さを再三指摘した。「法的に決まっているわけではない」などという言葉は、責任逃れを画策する狡猾な官僚の発言そのものだ。自分の言葉の重みを自覚しないようでは、「政治主導」を口にすべきではない。(尾形)