初詣で賑わう鎌倉市の鶴岡八幡宮(2010年1月4日)


【新春の気負い】

◎後戻りは許されない

 4日の鳩山首相の年頭記者会見は、首相としてのリーダーシップを国民に精いっぱい伝えようとする気負いが表れていた。
 指導力がない、言うことが揺れる―などと首相としての資質が問われるような評価を下されていたのだから、新年を期して政治主導を唱えてきた原点に戻ることを言いたかったのだ。
 国民の予算に対する関心を高めた事業仕分けの評判が良かったことに気を良くした首相は、今度は特殊法人や独立行政法人のあり方にも当てはめて、それが必要なのか不要なのかを見定めるという。とかく官僚の隠れ蓑になっている法人の実体を洗いざらいにするというのだから、行政不信に固まる国民にすれば大いに期待したいところだ。

 首相は外交面でも大きく踏み出した。
 「日米同盟を基軸に東アジア共同体を追求する。そのためにも普天間問題を解決しなければならない」
 首相の揺れる発言で、米政府の対日感情は悪くなる一方だと言われていることへの反論なのだ。
 首相は「日米同盟を深化させる」と明言している。首相が念頭に置く「同盟」は、日米安保を核とした防衛協力だけではない。環境、エネルギー、食料など総合的な安全保障を意味する。とはいえ、差し迫った日米同盟のキーワードは「普天間」である。
 普天間飛行場の移設問題は米側の再三の催促にもかかわらず昨年中の決着が先送りになった。いつまでに決着させるつもりなのか、決着できるのか。首相は昨年暮れに「5月までに結論」と言っているが、それを真に受けるものは残念ながらごくわずかだ。逆に、問題がより一層混迷するとの見方が多い。
 だから首相は年頭会見で「無駄に時間を浪費するつもりはない」と力を込めたのである。そして、「沖縄県民の理解、米国の理解、与党3党の理解を得て、『時間はかかったが、鳩山、いい解決策ができた』と言ってもらえるような結論を得たい」と強調した。
 首相の対米観の根底には、「米側の言いなり」を当たり前のように続けてきた旧政権時代の従属感を払拭しようとする思いがある。普天間問題で「揺れっぱなし」と言われる首相だが、好意的に言うなら、揺れも「外交上の駆け引き」と見ることができる。「日米関係ははっきりモノが言える関係に深化させたい」と言ったのも、その表れだろう。

 首相は内政について、まず第
2次補正予算案と10年度予算案の一刻も早い成立させることだと強調した。「命を守る予算」だと言う。首相らしい「友愛」の心からなのだが、今年は参院選が7月に予想される。鳩山政権にとっては「勝たなければならない」政治決戦の年だ。だから、衆院選を圧勝に導いた小沢幹事長の下で必勝を期す覚悟を披瀝した。
 苦しみぬいた予算編成だったが、まもなく始まる通常国会が混乱するようだと、政局はどう転ぶか分かったものではない。すべては参院選に向かって流れる―が今年の政局である。各党の4日の仕事始めは選挙モード一色だった。

×     ×

今年は、爽快な晴天で始まった元日の天気のようにとはいかないようだ。鳩山首相の年頭記者会見をテレビで見た後、初詣に出掛けた。
 混雑、雑踏を避けた例年通りの4日の初詣だったが、仕事始めのこの日も参拝客は途切れず、鎌倉駅から段葛を通って鶴岡八幡宮への道は人、人の波だった。大銀杏の脇の長い階段は参拝に向かう人、終えて戻る人でいっぱい。順番待ちの列に並ぶのが面倒なので、源平池の脇を横浜国大付属鎌倉校に抜け、荏柄天神の横を通って鎌倉宮(大塔の宮)に行き参拝を終えた。今年1年の平穏を祈って、獅子頭の付いた長さ1メートルほどの破魔矢をもらって帰るのもいつもと同じだ。
 不況の時ほど、新年に神社仏閣を訪れる人は多い。一昨年秋からの世界的不況は、いまだに先行き景気回復のめどは立たない。誰もが希望に満ちた初詣とはいかなかったのではないか。
 ともかく、新年は始まった。今年は個人的にも、あれやこれやと忙しい予定が並んでいる。一つひとつ、着実にこなしていきたいと肝に銘じている。

1014日)