【新政権の分権改革】=3回続き=

A「分権改革の専門機関は必要」

 これからの協議は、まさに国と地方の真剣勝負になる。そのための態勢がどうつくるのかである。
 そのためにどうしても必要になるのが、現在の地方分権改革推進委員会(丹羽宇一郎委員長)のように専門家で構成され、法律に基づいて首相への勧告権を持つ独立した権威ある組織だ。それが第二の問題である。
 国と地方の協議の場ができたからといって、問題処理がスムーズに進むとは限らない。細かい、専門的・技術的な作業を担当する機関が不可欠だ。その役割を担ったのが、第一次分権改革以来の分権委員会だ。地方6団体にはそれぞれ専門委員会があって分権改革の調査・研究に取り組んでいるが、ともすれば利害がぶつかる団体間の主張を越えた機関が必要だったし、事実、第一次分権改革以来、分権委員会を悩ませたのは団体間の思惑の違いだった。その調整に当たったのが分権委員会だった。

 丹羽委員会は20074月の発足以来、霞が関の各府省から連日のようにヒアリングを続け、昨年5月に第一次勧告、そして同12月に第二次勧告を当時の麻生首相に提出した。国と地方の役割を明確に分けようと、国が地方に義務付けていることや枠付けを整理し、同時に国が地方を支配する典型的な組織である「地方整備局」などの国の出先機関の抜本的な見直しを提言した。
 委員会は二つの提言をまとめただけではない。提言にたどり着くまでに、問題ごとに「基本的な考え」と「中間報告」を作成している。
 委員会の論議は公開だし、インターネットでも見ることができるから会議の模様は手に取るように分かる。公開された論議で浮き彫りとなったのは、霞が関官僚の分権改革に対する徹底抗戦だ。
 委員会が求めた改革の要求に対しては、ほとんどがゼロ回答だった。後ろに強力な自民党の族議員いて、首相官邸もそれを見て見ぬふりをしてきたからである。そうした分権改革に対する抵抗勢力は政権交代でこれまでのように跋扈することはないだろうが、省益を侵される官庁にすればおとなしく引き下がるとも思えない。理論面でも実態面でも霞が関官僚と渡り合える強力な組織は必要だ。
 丹羽委員会は来年3月で任期を終えるが、近く国の「義務付け」の見直しを早期に実現するよう鳩山首相に求める第三次勧告を提出する。続いて10月にも地方税財源の拡充を求める第四次勧告を予定している。
 勧告を基に、政府は来年3月までに「地方分権改革推進計画」を策定することになるが、分権関連法案作成を含む工程表は決まっていない。
 分権委に任された改革の青写真づくりは、言ってみれば細かくて専門的で気の遠くなるような難しい作業だ。仮に鳩山政権が分権委に代わる組織をつくるのであれば、どんな組織を想定するのか明確に示さなければならない。
=つづく=