【新政権の分権改革】=3回続き=

◎「分権委」の組織は不可欠だ

 @「国と地方の協議の場」

 新政権の地方分権改革をめぐるスタンスがはっきりしない。
 新政権が明言しているのは、@法律に基づく「国と地方の協議の場」設置A国の出先機関の原則廃止B国の直轄事業負担金制度の廃止Cひも付き補助金を廃止して一括交付金の交付―などだが、三位一体改革で積み残しになっている地方税財源問題については具体的な処方箋を示されていない。
 地方分権改革推進委員会は、来年3月で委員の任期が切れ仕事を終えるが、それ以後、同じような権限と役割を持った新組織ができるかどうか分からない。原口総務相は直属の「タスクフォース」を省内に設置、委員会がこれまで行った勧告を精査する考えだが、場合によってはこれまでの委員会スタイルを抜本的に変えることも予想される。
 現時点で想定される幾つかの問題点・課題は以上だが、新政権の目玉である行政のムダをあぶり出す「行政刷新会議」が、分権改革にどのような位置づけとなるのかも改革の行方を左右する。
 となると、新政権の分権改革への取り組みは大きな道筋を示しただけで、具体的な対策はこれからである。

 問題を簡潔に整理すると次のようになるだろう。
 第一は「国と地方の協議の場」である。
 法律で裏打ちされた国・地方の協議の場ができれば、地方の言い分はこれまで以上に「留意される」ことは間違いない。前政権までのように、国が地方の要望を「聞き置く」だけで済まされることはなくなるはずだ。国も地方も課題について真剣に向き合うことになる。同時に地方も言いっぱなしはできなくなるし、それ相応の責任も果たさなければならなくなる
 だが、問題はそうした協議がどの程度の頻度で行われるのか。また、協議に先立つ準備作業をどうするのかが明確でない。つまり、現時点では国と地方代表が懸案を協議するという方向付けができただけである。
 年末に向けて新政権は目下、前政権の補正予算の見直しに大車輪だし、同時並行的に来年度予算の編成方針、概算要求基準(シーリング)をまとめなければならない。
 そんな多忙な新政権の閣僚が、マニフェストで約束したからといって、同じように忙しい地方自治体の知事らと頻繁に会議を持てる時間的な余裕はまずない。さらに、正式な協議の場に持ち上げる事務作業をどうするのかなどの問題もクリアしなければならない。
 国と地方の代表者が集まって、分権改革の方向付けを話し合い決めることは可能だが、そこにたどり着くまでの細部の事務的な作業をする事務方が当然必要になる。
 これからの協議は、まさに国と地方の真剣勝負になる。そのための態勢がどうつくられるのか。
=つづく=