2009922

「自民党総裁選」(ブログ)

◎党再生の意気込みが弱い

 自民党の総裁選に立候補した谷垣禎一元財務相、河野太郎元法務副大臣、西村康稔前外務政務官の地方遊説が続いている。衆院選の惨敗から自民党がどう立ち直ることができるかを占う最初の関門が、28日の総裁選だ。3人の街頭演説は、「われこそは」のアピールはあるが、衆院選で政権交代を実現させた有権者の関心は今ひとつ盛り上がらない。

地方遊説に先立って行われた、日本記者クラブや民放テレビの討論会で見られた3人のさや当ては党内事情を浮き彫りにした。「党内融和」を訴える谷垣氏に対する「重鎮排除」主張の河野氏の対立。これに「若手の役割」を強調する西村氏が割って入った。同じ中堅・若手でありながら、河野、西村両氏の主張は平行線だった。
 谷垣氏の言わんとするのは、100人を少し超える程の小さな勢力(衆院)に落ち込んだ自民党が再生するには「派閥がどうのこうの」と言っている場合ではない。「皆でやろうぜ」と「老壮青協力」の全員野球を求めていることだ。
 これに対して河野氏は「古い自民党」の切り捨てを主張、森元首相や小選挙区で落選しながら比例区で復活当選した町村派の領袖の町村元官房長官ら党幹部が総裁選に介入していると名指しで批判、党再生は「残すべき自民党と、切り捨てる自民党を明確に仕分けることから始めなければならない」と一歩も引かぬ決意だ。選挙戦は谷垣氏と河野氏の事実上の一騎打ちの様相を呈している。

16日の本欄でも書いたが、谷垣氏の「全員野球」には党重鎮の影響力がどうしても色濃く残る。衆院議席がほぼ半減した自民党が、全員一致協力して難局に立ち向かわなければならないとする主張は一般論としてはそのとおりだが、党勢力が激減したといっても派閥の領袖の裏の動きが垣間見える。ここは、旧体質に思い切って大ナタを振るい党の体質を根本的に変える情熱を見せなければ有権者の見る目は変わらないだろう。
 谷垣氏は当初、総裁選出馬で党再生の「捨て石」になる覚悟だと言った。その後、この「捨て石」を「礎」と言い換えた。「捨て石」はいかにも聞こえが良くないと考え、「礎」と言い換えたのだろうか。真の党再生を目指すのであれば、「捨て石」の方が決意がにじむのだが…。
 とはいえ、理解しがたいのは党の再生を声高に主張する中堅・若手が、肝心なところで一歩前に進まないことだ。総選挙惨敗を検証するはずの両院議員総会や、その前の両院議員協議会でも、彼らからは再生に向けたほとばしるような情熱を感じることはできなかった。
 「協議会」は、総選挙前に党の分裂を思わせるような印象を与えないように形だけの協調を演じて見せただけだし、「議員総会」にいたっては総選挙の惨敗で「思考停止したのではないか」と思わせるような集まりだった。

 総裁選は国会議員199票、党員・党友の地方票が300票と地方票が重みをましている。共同通信が20日に集計した47都道府県連の幹事長や幹部へのアンケート調査結果では、15府県が「谷垣氏」と回答したが、28都道府県連は回答を留保している。読売新聞(22日付朝刊)は11府県が谷垣氏支持(34都道府県は未定)だ。現時点では谷垣氏優勢だが、党改革にどのような票の流れが表れる予断を許さない。
 かつて「自民党をぶっ壊す」と叫んで自民党総裁・首相の座を手にした小泉元首相は、地方票で圧倒的多数を得た。今回の総選挙も地方は自民党候補に「ノー」を言い渡した。谷垣氏に地方票を吸引する力があるのか。あるいは、懸念される「長老支配」に谷垣氏が耐えられるのか。地方票が出すであろう応え次第で党再生ができるか否かが決まる。党員・党友の責任は重い。(尾形)