2009916

【政権交代4景】(ブログ)

◎満帆の民主、落日の自民

 鳩山新政権誕生を翌日に控えた15日の東京・永田町界隈は、政権交代の厳しい現実を浮き彫りにした。帆に風をいっぱい受けて動き出した民主党。対する自民党は力なく政権の座から降りた。スポット的に政界の素顔をスケッチすると…。

■“入学式”

 民主党の両院議員総会の会場となった都内のホテルに続々と姿を現した新人議員たちの表情は、さながら喜びと緊張に包まれる有名大学の“入学式”を感じさせた。
 テレビに映し出される初当選の議員は140人を超える。中でもこの日の総会で正式に党幹事長に決まった小沢氏の全面支援を受けた話題の女性議員らには、いやが上にも周囲の視線が集まる。
 互いに交わす名刺は出来上がったばかりの、インクの匂いがしただろう。その会場に選挙戦を指揮した小沢氏や党幹部が入ってくると、それまでのにぎやかさが静まり、今度は緊張感が周りを包んだ。
 挨拶に立った鳩山代表は「歴史的な日が始まる」とあいさつ。

■最後の閣議

 麻生内閣の最後の定例閣議は、各閣僚から感想めいた発言もなく、わずか8分で終了した。共同通信によると、舛添厚労相は「粛々と署名すべきは署名してさっさと終わった。無味乾燥です」。内閣のスポークスマンである河村官房長官は会見で「政権交代という歴史的な出来事に遭遇したのは、与党として非常に残念だ」と悔しさをにじませたという。
 朝日新聞は、河村長官が定例会見で「国民の多くの皆さんから『もう一度、自民党よみがえれ』というカーテンコールが聞こえるように私には思える」と党再生を誓ったが、「残念ながらこれは(惜しまれながら退場する)カーテンコールとは言えない」と語ったと伝えている。
 不思議なことに、各紙とも麻生首相の言葉を一言も報じていない。既に「過去の人」になってしまったと、紙面に載らなかったのかもしれない。政界の非情さが分かるような気がする。

■捨て石

 谷垣・元財務相が自民党総裁選出馬を正式に表明した。谷垣氏は前日、党再生の捨て石になると語ったが、この日は派閥順送りや年功序列といった自民党の悪しき慣習を正さなければ党再生はないと断言。ベストメンバーで選挙に臨む態勢をつくらないと駄目だと決意を表明した。「選挙の顔」を最優先にした選挙がいかにもろいものであったかを反省したのだが、谷垣氏も無関係とは言いにくい。
 谷垣氏はさらに「国民に対して果たす義務がある」と語ったが、そのやる気を党改革などで具体的にどうするのか、今ひとつ伝わってこない。派閥、長老政治のソフトランディングを狙った「谷垣擁立」の印象も消えない。

■辞任

 予算編成のかじ取りを担った政府の財政経済諮問会議の論議をリードしてきた民間議員4人が15日、辞任した。
 諮問会議が省庁や自民党の圧力を跳ね返して機能したのは小泉政権の構造改革路線のころ。竹中平蔵氏を経済財政担当相に充て、金融機関の不良債権処理、郵政改革に取り組んだ。さらに、予算編成では「骨太の方針」を決め、翌年度予算の概算要求基準(シーリング)を骨太の流れに沿うよう定着させた。
 しかし安倍内閣になってから、自民党や霞が関の主張が強まり諮問会議の役割、機能も弱まっていた。
 新政権は諮問会議を廃止し、新設の「国家戦略局」に機能を移す。(尾形)