【不正経理】


◎公金感覚まひした自治体



 国の補助事業に絡んで不正に処理された税金は、二〇〇六年度までの五年間で自治体の単独事業を加えると全体で十一億円を超え、うち補助金相当額は五億五千万円に上った。
 会計検査院が十二道府県の経理を調べた結果だ。自治体の不正経理や補助金にまつわる怪しげなカネの使い方は「またか」と思わざるを得ない。
 一昨年明るみに出た
岐阜県職員組合による裏金づくりをはじめ、大阪府宮崎県、名古屋市の組織的な裏金問題は記憶に新しい。十年前の会計検査院の調査でも二十三道府県で四百三十億円の不正が判明、その後も裏金問題が続発した。自治体の公金感覚がまひしているとしか言いようがない。
 今回の検査院の調査が明らかにした不正経理の手法はこうだ。
 一つは物品を架空発注して代金を業者にプールさせる「預け」。もう一つが、本来自治体予算で処理すべきアルバイト職員の人件費や職員の出張経費を補助金から出す「はり付け」である。補助金の使用目的を拡大解釈して補助金を使い切る、さらに財政が乏しいので自前の予算を使わず補助金で肩代わりする―といった具合だ。
 不正経理額の最多は
愛知県の約一億三千万円(「預け」は千九百万円)。これに県単独事業の不正を加えると三億円近い。さらに県の独自調査で事務用品購入費三百万円が消えていた。
 
愛知県に次いで不正額が多かったのは岩手県の一億七百七十万円(「預け」は千八百万円)。「県費支出を抑えるため不適正な経理を行った」という。
 各自治体は釈明、陳謝に追われているが、一方で「道義的に問題があるようなたぐいではない」とし、検査院との見解の違いを強調する知事もいる。
 だが、補助金等適正化法に照らせば、補助金を目的以外に使うことは禁じられており、違反すれば交付決定が取り消され補助金を国に返還しなければならない。つまり、補助金流用は明らかに違法だし裏金や私的流用を否定することで、不正経理を正当化するのは本末転倒である。
 確かに、目的が細分化された補助金制度が現状に合わない面があるのも事実だ。結局は地方の自主性を縛る現行の補助金制度を抜本的に改革する以外にない。
 今回の不正経理問題は、分権改革を主張する自治体が、一方で補助金の確保とその使い道を不適切な形で続けてきたという矛盾を浮き彫りにした。
 分権改革は国の補助金を減らして自前の財源を元手に地域の自立を図ることである。ルール違反の経理をしているようでは住民の理解は得られない。自ら襟を正す心構えがなければならない。

08年10月25日付)