2009年8月19日

◎国のあり方が問われる選挙だ

 いつもは静かな我が家の辺りにも候補者を連呼する選挙カーが走り回っている。18日に公示されたが、選挙戦は事実上終盤を迎えている。残り10日で状況がどう変わるのか、変わらないのか。マニフェスト選挙と言われるが、各党ともマニフェストは出陣までである。公示後は、いかにサバイバルレースを勝ち抜くかだから、きれいごとなど言って入られない。「勝てば官軍」が戦いの常である。

 公示前日の17日に東京・日比谷の日本記者クラブで行われた、各党党首の討論会を見ていておもしろかったのは、共産党の志位委員長が民主党の鳩山代表に質問を続けたことだ。本来なら、仇敵の自公両党を攻撃するのが当然なのだが、もはや麻生、太田両党首に質問をしても意味がないと思ったのだろう。志位氏の鳩山氏への質問は、明らかに「鳩山首相」を念頭に置いたものだ。
 もう一つ興味を引いたのは、日本記者クラブの委員が麻生氏に問うた内容だ。
 「首相の話を聞いていると、衆院の圧倒的多数を占める自民党が、3分の1の議席しかない民主党に質問している姿は、政権党の党首と思えない」
 「郵政選挙後の過去4年間をどのように考えるのか」
 これに対する麻生氏の応えは、昨秋からの世界不況に「政局より政策」と経済対策に全力を注いだ内閣の努力を繰り返すだけだった。攻守所を変えるやり取りには応えはなかった。時間の制約はあったとは思うが、質問者は麻生氏に再質問で、心のうちを語らせるべきだった。

麻生氏は「日本の安心・安全を守る 責任力」を声を嗄らして訴えている。加えて、「保守」を前面に打ち出している。日本の歴史、伝統を守るのは自民党というわけだが、有権者は冷めている。
 今回の総選挙が日本の政治史の転換点になりそうだと、有権者は何となく思い始めている。今は、「保守」か「革新」かといった、保革がつばぜり合いを演じた社会環境ではない。「責任力」を強調する麻生氏の頭には、日本の政治風土が昔のまま残っていると思えてくる。
 前にも本ホームページ指摘したが、旧態依然とした政治・行政の仕組みの限界が明確になったにもかかわらず、従来の仕組みの中で責任を果たせると思い込んでいることの間違いに気づかず、「責任力」が大手を振って歩いていることである。
 中央集権が行き詰まり、政治と行政の仕組みを根本から変えなければこの国の前途が危ういと様々な改革が行われてきた。そして、国と地方のあり方を聖域なしに見直し・変革しようというのが、今の「地方分権改革」である。
 率直に言って、各党の分権改革のメニューは中身が乏しい。全国知事会など地方6団体の要望にほぼ「満額回答」しているし、人気知事の知名度に頼った「粉飾マニフェスト」もある。今まで見向きもしなかった要請が、あっという間に組み込まれたのだから、総選挙目当ての粉飾と言われても仕方がない。
 選挙結果は、かなりの確立で民主党を中心とした野党政権の誕生を予感させる。民主党も勝利を前提とした政権の新機軸をまとめつつある。

まる4年ぶりに自分の意思を表せる今月末の総選挙は、過去の総括と今後の国の指針を決めることになる。もはや「お任せ民主主義」は通用しない。有権者自らが参画する「参加型民主主義」なくして地方の、そして国の将来像は描けない。「この国のあり方」を真剣に考える歴史的な総選挙を期待したい。(尾形)