【自治体の不正経理】=続・腐りきった体質を直せA完

◎分権改革の信が問われる

会計検査院の指摘を待つまでもなく、経理が正常に行われているかのチェック機能が働いていれば問題は起きない。
 ところが、自治体の監査機能と議会の監視の目が全く利いていなかった。自治体職員にも補助金の扱いがあいまいなまま、補助金の使途目的の範囲を勝手に判断した。それが、「はり付け」という形で何のてらいもなく行われてきたのである。

 裏金をため込んで遊興費に使うといった個人的な流用がなかったとはいえ、「預け」のプールをつくるなどは論外だ。「預け」が、いずれは昔の悪しき裏金同様の資金源となって使われることになるからだ。

 情報公開の重要性が言われながら、経理部門の情報は隠蔽されたままだった。公共事業の談合入札がやり玉に上がってから、入札制度が改善されて事業費がかなり抑制されるようになった。
 ところが、大型の公共事業とは違って、事務用品のような日常的に使われる物品の処理は、住民とは直接のつながりはないし、注目もされない。その目立ちにくい事務用品の扱いに不正処理の矛先が向いていたのである。行政監査の目が届きにくい部門の不正経理だけに、国民からすれば思いもつかなかった不正である。そこに自治体の住民無視の傲慢さが見えてくる。

 ただ、地方自治体の公金に対する感覚がまひしていることだけが問題ではない。補助金は前稿で記したように、中央省庁から自治体に交付される、いわば活性化の「事業支援資金」である。省庁と自治体をつなぐ太いパイプでもある。
 補助金は、省庁の権益・省益を確保する有力な手段だ。言い方を替えれば、省庁は補助金を使って自治体を動かすこともできる。このため、地方分権改革の推進には補助金廃止がどうしても欠かせない。ところが、財政が窮迫している現状では、補助金の大盤振る舞いはできないが、地域活性化を求める自治体にとっては、補助金はいまだに「青い鳥」であることに変わりはない。
 故に、省庁も自治体の補助金の取り扱いについて深い立ち入りすることはない。補助金は自治体にとっても省庁にとっても一つの「実績」であるからだ。

 12道府県の補助事業をめぐる不正経理問題で所管大臣は厳しい叱責を口にした。
 鳩山邦夫総務相は「極めて不愉快。政府が地方を元気にしようと取り組んでいるときに、言語道断だ」と批判、総務省として自治体に対する指導・監督を強める意向を示した。金子一義国土交通相も「誰のカネだと思っているのか。意識が非常に乏しい」と語っている。
 政府のスポークスマンである河村建夫官房長官は「補助金等適正化法に基づいて各省庁が適切に対応すると考えている」と述べ、補助金の交付決定の取り消し、自治体に補助金の返還を求める考えを明らかにしている。
 会計検査院の調査を受けて、今回対象にならなかった大阪、埼玉、山形、島根、秋田の各府県は独自に調査に乗り出すという。

 今回の不正経理問題は、あろうことか地方分権改革を掲げて国と対峙し、補助金の大幅削減・廃止を求める自治体の足元で起きた。
 分権改革は第2段階に入り、事細かな具体策で省庁と激しく遣り合わなければならない時期を迎えている。その際忘れてはならないのは、国民の改革に対する支援である。
 国民を味方につけなければならない自治体が、公金の不正処理を続けていたのだから、何をか言わんやである。自治体は猛省し、自ら襟を正す証しを見せなければ、国民は納得しない。

20081024日)