【国政不信】

沖縄県議選がダメを押した

 8日投開票の沖縄県議選で、保守系の仲井真弘多県政の与党が過半数を割ったことは、先の衆院山口2区補欠選挙に続いて、有権者がまたも後期高齢者医療制度で国政不信を突き付けたものである。
 沖縄は基地問題、とりわけ、在日米軍再編問題で焦点の普天間飛行場の名護市・辺野古への移転の行方が注目されている。ところが県議選の争点は、これまで当たり前であった「基地問題」を飛び越して生活に直結する「福祉・医療」に軸足を移してしまった。高齢者が多い沖縄県にとっては、後期高齢者医療制度は全く受け入れがたい仕組みなのである。
 本来、国の方針で有権者を説得すべき与党候補者が、その疑問に真正面から応えられないようでは戦いにはならない。制度の根幹を残しながら、負担を微調整するような小手先の手直しで国民が納得するはずはない。しかも、その微調整に必要な財源についても明確な根拠はない。
 そのことへの答えが自民党の大敗、与党の過半数割れである。
 議席の過半数を占めた野党・中立が仲井真県政に厳しい注文を付けるのは当然だし、国政と県政のあり方を再検討するよう求める勢いを強めるだろう。
 県議選は知事が言うように「県政運営の中間テスト」であり、選挙結果は「私の県政運営への批判」である。

 沖縄は今、厳しい選択を迫られている。

 米軍再編問題では、辺野古崎をまたいで計画されている、普天間飛行場の代替施設となる「V字型」滑走路を海側に移動できるかがある。県と地元の要求に、米政府は移設交渉を振り出しに戻してしまうと強く反発している。日本政府も、移設交渉の「ゼロからの再スタート」になりかねない要求を認める気はない。

 もう一つは、沖縄の全体的な経済振興である。再編問題と経済振興は密接に結びついていて切り離せない。国の支援なしに沖縄振興計画は無理だし、これに基地問題が複雑に絡み合ってくる。

 沖縄ではようやく「道州制」が話題に上るようになったが、道州制の前段となる自治問題が必ずしも整理されていない。

 今回の県議選について地元紙の論調は、後期高齢者医療制度が有権者の与党離れの主因だったとしながらも、県民の意識の中にある国の沖縄政策の「アメとムチ」が投票行動に強く影響したと指摘している。
 米軍再編交付金で自治体を「コントロールしようとする政策は、自治体の自主性を損ねるだけでなく、そこに住む住民の『誇り』や『土地への愛着』を逆なでするような結果を招く」し、高齢者医療制度も生身の人間の息遣いや日々の暮らしの現実を無視して政策が作られているということだろうか。ぎすぎすして、ぬくもりが感じられない」(沖縄タイムス10日付社説)と厳しい。
 国政選挙もそうだが、県議選は身近な選挙でありながら有権者の関心は低い。投票率が比較的高い沖縄県だが、今回も投票率の低落傾向に歯止めはかからなかった。地方分権改革が進みつつあるが、議会改革に見るべき変革はない。

 琉球新報は、そんな議会に「顔の見える政治家になってほしい」と次のように注文を付けている。
 「劇場的なパフォーマンスの意味ではない。選挙戦で訴えた政策を議会活動の場でも繰り返し提起し、民意の反映に全力を挙げてもらいたいという思いだ」(琉球新報9日付社説)

沖縄県議選の与党敗北は、国政の「ねじれ」を民意が前向きに受け止めたものである。敗因が後期高齢者医療制度にあることは、政府・与党首脳や幹部も認めている。民意離れが分かりながら、手を替え品を替え急場を乗り越えようとする内閣に、世論がどのような評価をしているかは、マスコミ各社の世論調査で明らかだ。

前にも本ホームページで書いたが「経綸」なき政治は国民を不幸にする。「サミットがある」からと、ズルズルと混乱を引き延ばす理念なき政治は早く幕を閉じてほしい。
 (
08611日)