12) ◎応援プログラム


 国と地方の役割分担は、地方分権改革推進委員会が第二次分権改革で本格的に切り込むテーマだ。だが先の統一地方選以来、再び「国と地方」の関係を考えさせる問題が持ち上がった。
 一つは「頑張る地方応援プログラム」であり、もう一つは「ふるさと納税」構想である。ともに、地方の主体性にかかわるものだ。
 応援プログラムは、自民党が安倍首相の施政方針演説から引用、統一選の公約にして、地方重視の姿勢をここぞとばかりアピールした。プログラムの趣旨を説明し、併せて地方の意見を聞く 「頑張る地方応援懇談会」は、2月4日、菅総務相も出席した徳島県上勝町を皮切りに、これまで約40自治体で開催された。ところが、評判があまり芳しくない。
 地域活性化に独自の施策で取り組み、成果を上げた自治体に交付税を上乗せするというのが応援プログラムだ。つまり、「出来高払い」の色彩が濃い。
成果を判断する基準として国が示したのは、域内の生産、出荷、小売り額から行革の達成度、転入者人口など一目で自治体の実態が分かる9項目の指標。
 だが自治体が言うには、この9項目の指標は、いかにも画一的な物差しだ。地域によって達成できる成果が異なり、努力しても数字に表れないことも多い。例えば市町村合併で再編された自治体には、財政以外でも福祉・医療・環境など分野で想定を超える問題が飛び出しているところもある。住民が、事前に喧伝された合併効果が表れないと不満をぶつけていることだってある。
 そんな状況に向き合う自治体は、「見えにくい努力」を求められる。それを、国が言うような形で指標化することは無理だ。雇用問題にしても、国が示した「若年就業率」も大事だが、高齢社会を考えれば、「高齢者の就労率」だって地域社会では重要だ。地方の中小都市の実情を見ると、経済の沈滞を食い止め現状維持することだって大変なことだ、と何人もの首長は物申している。
 「ふるさと納税」構想は、郷里を思う都市部の生活者の郷愁を呼び覚まし、税財源の不足に頭を抱える地方にも支援と映る。住民税の一部を機械的に古里に回すほど税制は単純ではない。耳当たりの良さだけで話題になっているのかもしれない。総務省の構想研究会がどんな提言をするのだろうか。
今年1月、首相は地方団体代表との懇談会で、「生き生きと、みずみずしく頑張って伸びていく地方があって、はじめて美しい日本ができる」とあいさつした。
 「美しい日本」づくりにつなげるのはいかにも首相らしいが、霞が関や永田町の物差しで再生・活性化の基準を決め評価するのは、「個」を重視する分権の発想に反する。
プログラムの総額は3000億円。今年度は2700億円(普通交付税2200億円、特別交付税500億円)が充てられる。市町村が策定する活性化計画に取り組む経費として1市町村当たり年3000万円、3年で計9000万円が普通交付税から支援される。そして、成果の出た都道府県、市町村が交付税の上乗せ配分を受けることになる。
 三位一体改革で自治体の虎の子の交付税は5兆円も削られた。応援プログラムの支援も交付税の変質につながるのではないかと、地方の不安は尽きない。

(07年夏季号、6月22日)