◎増田さん、もっと頑張れ

 政府の地域活性化統合本部がまとめた地域の再生を目指す総合戦略は、増田総務相の名を取って「増田プラン」と呼ばれる。税収格差でいがみ合う大都市と地方の中小都市の仲直りを念頭に置いたのか、基本理念は「都市と地方が支えあう『共生』」の考え方を共有し、国の基本方針を明確にするである。

 この方針に立つ「地方の元気再生事業」は地域住民からの公募とする。そして、地方の様々な事情を考えて地方を@地方都市A農山漁村B高齢者の割合が高く、基礎的条件の厳しい集落―に3区分した。そして、具体策として約100事業を挙げている。
 地域の実情に目を向けながら、どうしたら抱える課題を改善・解決できるかを、地方を回って開いた「くるまざ対話」を基にした。岩手県知事として地方再生の処方せんを考え続けた増田氏ならではのプランが随所に盛り込まれているが、戦略的な意味合いは乏しいとの批判は少なくない。

 例えば、振興策への国の財政支援だ。地方、民間のアイデアを尊重する姿勢は理解できるが、採用を狙うあまり、地方側が「霞が関」の理解を得らやすい事業を優先しかねない心配は残る。その場合、結局は官僚の判断がモノをいう。
 それと、新規事業と言いながら、既に事業要求しているものを、看板の塗り替えで要求してくることだってありうる。現に、地方自治体が政府の求めで掲げた「がんばる自治体応援プログラム」事業の中には、名前を変えただけの「横滑り」が結構ある。
 そのような不安をさせないためには、都道府県、市町村が主体的に問題に向き合うことが必要なことは言うまでもない。と同時に、事業選択の公平性、透明性が追求されなければならない。

期待はずれだったのは、増田氏が当初示していた「税源交換」が盛り込まれなかったことである。都市部に集中しがちな地方法人2税(事業税、住民税)の一部を国税に移す代わりに消費税の地方分を現行の1%から比率を増やすことだ。
 この問題は税制改正とも密接に絡むから、プランに明示することが難しいのは分かるが、方向性を示すことはできたはずだ。確かに、増田氏が総務相就任前まで席を置いた地方分権改革推進委員会が去る11月に公表した中間報告も財政問題に深入りすることは避けた。総務相とはいえ、1人「敵陣」に深く入ることはできなかったのかもしれない。

増田氏は国会議員ではない。小泉内閣で総務相を務めた竹中平蔵氏(慶応大教授)も最初は国会に議席を持たなかった。
 小泉首相が突進した地方分権改革の理論的指南役は竹中氏だ。米国流の合理化・効率化を分権改革に当てはめ、旧来の「情緒的」地方行政を切り捨てた。
 それが、小泉流分権改革を走らせたのである。だが、当時でも「議席を持たない」竹中氏への政府・自民党内の反発は強かった。その反発を抑えたのが、小泉首相の存在である。竹中氏の後ろには、常に首相の影があった。
 もっとも、竹中氏はその後、国会議員となり、大手を振って改革に邁進する。

 増田氏の立場を考える場合、政治状況は違うし、福田首相の政治力も小泉氏とは異なる。「増田プラン」の限界と言えるかもしれない。とはいえ、分権の流れは止められない。
 増田さんには、もっと頑張ってもらわねば。
(08年新年号 07年12月25日)