⑨【リゾート法見直し】

◎着実な観光振興に知恵を出せ

 沖縄の観光客はついに、年間で五百万人を超えたという。県の観光振興計画では二〇一一年には六百五十万人の入域者を想定している。そのための施設整備を考えると、文字通り「全県リゾ
ート」の色彩を一段と濃くするだろう。県が依頼した「美ちゅら島沖縄大使」は国内外で活躍する著名人や沖縄ゆかりの七十七人というから、そのPR活動も見事になろうか。
 二〇〇〇年の主要国首脳会議(沖縄サミット)で世界に発信された沖縄の魅力を、さらに高められれば申し分ない。ここは沖縄の官民挙げての努力に期待しよう。
 だが、浮かれてばかりはいられない。総合保養地域整備法(リゾート法)について、国土交通、総務など四省が同法で定める基本方針を十七年ぶりに変更。施設の整備などが当初の予定どお
り進まず、実現が見込めない構想の廃止を含めた抜本的検討を四十一道府県に求めたからだ。
 バブル経済の崩壊で顕在化したリゾート構想の遅延・挫折を国も放っておけなくなった。不況、雇用不安、地域経済の不振は、国民の余暇活用の芽をを摘んでしまった。
 国交省の調べだと、リゾート整備が計画された全国の特定施設のうち、整備が完了ないし整備途中のものがわずかに24%(二〇〇二年一月現在)にすぎない。大半の計画が挫折したわけだ

 入域者数の増加で一見、華やかに見えるが、沖縄トロピカルリゾート構想の進ちょく率は、全国平均を下回る19・5%。また、構想見通しと実績を比べると、特定施設の利用者数は見通し
の41・3%でほぼ全国平均並み、雇用者数は三割に満たない。
 はた目ほど沖縄のリゾート構想が進んでいるとは思えない。逆に、個別では計画の中止・撤退が想像以上に多いことが浮き彫りになったといえる。
 リゾート法は一九八七年に施行された。ゆとりある国民生活の実現と地域振興の推進を目的にしたのだが、当時はバブル経済の全盛期である。国が法律を作ったことで、自治体はそれぞれの
構想にお墨付きをもらおうと先を争うように手を挙げたのだ。沖縄も含めて四十一道府県、四十二地域の構想が承認された。だが、整備が予定された八千八百四十二施設のうち、七千八十三施
設が未開業だ。
 沖縄に限らず、いずれの構想も慎重に検討されたはずだが、見通しの誤りはバブル経済に酔いしれた「つけ」が回ったとしか言いようがない。カネ余りの時期を映しだすように「非日常性」
が通用すると、何ら疑うこともなく考えた発想の貧困さは、経済の荒波に吹き飛ばされ、倒産、不良債権となって表れた。
 国の基本方針の見直しは、野放図なリゾート計画の挫折を意味する リゾートを求める国民の欲求は強い。豪華主義から体験型観光に転換するなど、方向転換して人気を呼んでいるところも
ある。
 リゾート構想が国民の欲求の受け皿を目指したのは間違いではないが、ソフト面で欠けるものが多々あった。多様化する観光客のニーズにどう応えるか。確たる将来像を描くことなしに、沖
縄観光振興の将来も安心できない。

(沖縄タイムス 2004年3月14日付)