K【道州制】

 ■石井正弘・岡山県知事(全国知事会道州制特別委員会委員長、道州制ビジョン懇談会メンバー)

「道州制は我が国の統治機構を根本から変えるもの。国と地方が対等の立場で協議を行う場と仕組みは絶対必要だ」

                               聞き手 尾形宣夫「地域政策」編集長
【略歴】

いしい・まさひろ

1945年生まれ。69年、東京大学法学部卒。同年、旧建設省(現国土交通省)に入省。大臣秘書官、内閣法制局参事官、建設省大臣官房文書課長、大臣官房審議官を経て96年11月、岡山県知事に就任。現在3期目。2001年11月、第27次地方制度調査会委員(―03年11月)、04年3月、第28次地方制度調査会委員(―06年12月)に就任。この間、03年7月に全国知事会総務常任委員会委員長。06年11月、全国知事会道州制特別委員会委員長に就き、07年1月、道州制に関する知事会の「基本的考え方」をまとめる。ほかに、第3期、第4期中央教育審議会委員を務めている。
座右の銘は 中国の古典「四書 五経」の中の「中庸」の言葉「至誠無息(しせいむそく)」(至誠はやむことなし)。サザンオールスターズの「チャコの海岸物語」を口ずさむ意外な側面も。岡山市出身。

▽道州制の本格論議は画期的

尾形 政府の道州制ビジョン懇談会が開かれ、本格的な道州制論議がスタートしました。全国知事会も特別委員長の石井さんを中心に「基本的考え方」をまとめています。真剣な論議が望まれます。

石井 昨年6月、島根県松江市で全国知事会議を開催したときは、いろいろな意見が出て意見が集約できなかった。その後、知事会の特別委員会で議論をつづけてきたが、安倍内閣が秋にスタートし、首相は所信表明演説ではっきりと道州制の導入にむけて検討していくと表明、そのビジョンを3年をめどにつくりたいとはっきりおっしゃった。
我々、地方側からみると、このことが(道州制の)本格論議に向けての画期的動きだったと受け止められたと思う。その後、私は道州制特別委員会の委員長を命ぜられ、急遽、議論をとりまとめて、今年1月18日の全国知事会議で議論をし、一部、修正の上で道州制問題に関する基本的考えをまとめた。
一方、政府の方は道州制担当大臣に渡辺喜美さんが就任してビジョン懇がスタートし、目にみえる形で今後のスケジュール、本格的な導入に向けての検討が始まった。
渡辺大臣は、道州制の狙いについて、地方分権改革の総仕上げであると言い、総理も地方分権、国と地方を通じた行財政改革といったことを話しておられるので、かなり、イメージが具体化し、国と地方が共有化できるようになった。

▽知事会の「基本的考え方」が議論の前提

尾形 ビジョン懇の第一回会合の後の会見で、座長の江口克彦さん(PHP総合研究所社長)は、来年の3月ぐらいに中間報告をまとめ、最終的には2015年か2020年あたりを目安として道州制に移行するという見通しも示しました。江口さんの個人的な考え方だとは思いますが。

石井 総理が3年以内のビジョン策定を指示する中で、ビジョン懇が1年で中間報告をまとめるのはかなり加速されたというのが第一印象だ。しかし、逆に言えば、検討を速めるということは、政府も地方分権の大きな流れに理解が深まってきているなと、私は好意的に受け止めている。
ただ、知事の中には「必要だ」「推進すべきだ」という意見もあれば、「なお慎重に議論を積み重ねていかなければならない」とか、「時期尚早」とさまざまな意見もあるので、知事会としては、どちらの立場から見ても地方の意見を反映してもらうべく、一緒に議論していかなければいけないんだ、という雰囲気にはなってきていると思う。

尾形 言われるように議論は加速されるかもしれませんが、これからの論点を考えた場合、政治レベルや霞が関レベルで加速されるのではなく、国民的な理解や認知が必要です。知事会の「基本的考え方」で示された七つの前提のように、道州制は地方分権の推進のためであって、かつ中央省庁の解体的再編まで注文をつけています。具体的な論点を考えると、「道州像」があいまいなままの政治主導のスピードアップは要注意ではないですか。

石井 国民的論議が大事だということは申すまでもないこと。しかし、その前提としての大きな問題は、七つの前提条件はいずれも絶対に守って、これを前提に議論をしてもらわないといけない。それを前提にして議論するのであれば、知事会の方も一緒に議論していく。
ところが個別に見ると、例えば、地方分権改革のためとは言っているが、政府や与党の議論を見ていると、分権よりは、国の財政再建だとか、国と地方を通じた行政改革など、要するに財政問題が前面に出て、渡辺担当相の言う「地方分権改革の総仕上げ」という声が陰に隠れているような気がする。
もっと大きいのは、言われたように中央省庁の解体再編を伴う、国と地方を通じた国の統治機構のあり方を根本的に変えていこうという大議論なのだということが、まだまだ十分に認識されないまま、総論的に道州制問題を検討しようではないかと、感覚的に進んでいるのが懸念される。これは、これからの論議の中で、しっかりと訴えていくつもりだ。
国と地方を通じた統治機構のあり方を根本から変える議論を進めるためには、国と地方が対等の立場で協議に参加できる場をつくってもらって、政治主導で議論を進めていきたいと思う。

▽地方に起点を置いた制度設計が必要

尾形 国民的議論はどうなりますか。

石井 国と地方が真剣に対等の立場で話し合う中で、今後、道州制の問題にどう取り組んでいくかを決めるのは国民の選択だ。国民的論議に起こすためにも、この道州制問題の基本的な考え方、どういうメリットがあり、逆にどういう課題があるのか。目的から始まって、制度設計、導入のメリット、デメリットを分かりやすく国民に論点整理をし、議論に一緒に参加してもらうことを同時にやっていかないと、この問題は進んでいかないなと思う。

尾形 現在の道州制論議は政治レベルで、認識や論点があいまいなまま進んでいる。そういう形での政治主導であってはいけない。そうではなく、三位一体改革で明らかなように、官僚に任せておいたらできないから政治の大きな力で引っぱっていく必要があるという意味での政治主導でないといけません。

石井 私もそれを痛感している。中央省庁の人たち、永田町の人たちと話をすると、真の「政治主導」は極めて重要な点だと思う。国にとって、永田町にとって、自分たちの都合のいい道州制にしていこうという制度設計になってしまうようなことを許してはならない。
それは、三位一体改革に表れている。地方の自主性や裁量性が高まるべき改革が中途半端に終って、むしろ、我々が望んでなかった地方交付税の大幅削減が、地方財政を危機的な状態に追い込んでいる。
こういったことの反省の上に立つと、道州制議論は、我々地方側からは警戒心をもって対応していかないと、今度ばかりは失敗したら、とんでもないことになる。緊張感をもって、政治的にもしっかりとチェックしていかなければならないと思う。

▽「地域主権」の視点で議論が必要

尾形 そのためにも、三位一体改革の時に設置されたような国と地方の協議の場が必要です。それぞれが描く青写真が違ったまま、議論が交わされるようでは、いい答えが出るはずがない。どうしても、関係閣僚と地方代表が差しで話し合う協議の場を設けて頻繁に話し合い、互いに共通認識を持ち合わせる形で話を進めていく必要があります。
 地方の期待が裏切られた三位一体改革の教訓を踏まえた態勢を整えたらどうですか。

石井 今回の「道州制に関する基本的考え方」の中で、国と地方の協議の場が政治主導のもとで設置されるべきだと謳ったのは、それが今回は絶対必要だと思うからだ。
 今までの第一期の地方分権改革と違って今回の道州制の問題は、広域自治体である都道府県だけの問題でなく、国の統治機構を根本から変えてしまうわけだから、国と地方が一緒になって対等の立場で協議を進めていかないといけない。私たちが言っているのは、国の仕事は外交、防衛、司法、通貨などの事務に限定されるべきで、内政に関することは全部地方ということになると地方も責任が大きくなるから、地方分権というよりは「地域主権」という考え方に立って、道州制の議論はしていかないといけない。そうでないと方向性を誤ってしまう。

尾形 全国知事会には特別委員会がありますが、別に二つのプロジェクトチーム(PT)が発足、組織の態勢が強化されました。

石井 一つは「道州の組織自治権に関するPT」。これは、首長と議会議員の選出方法と組織、そして自治立法の拡大、つまり条例制定権の拡大などが主たる検討課題。もう一つは、「道州の税財政制度に関するPT」で、ここでは道州間の税源の偏在性を可能な限り少なくしながら、自立できる税財政制度はどうあるべきかを議論する。この中には、税源が大都市に集中している現状をどう考えていくか困難な大都市問題がある。

▽自民党調査会の動きを注視する

尾形 政府にビジョン懇があって、地方側には特別委も含めて三つの組織が動き出しました。それに加えて国と地方の協議の場をつくろうというわけですが、それぞれの組織の位置付けはどうなりますか。

石井 ビジョン懇は、あくまで道州制担当大臣の下に設置された地方も含めた有識者が集まったもの。知事会は道州制問題の当事者として特別委員会と専門的な問題を扱う二つのPTがある。
 これに対して、私たちが提案している国と地方の道州制に関する協議の場は、関係閣僚と地方6団体の代表者が定期的に会合を重ねる、というイメージだ。

尾形 形としては、三位一体改革に関する「協議の場」と同じメンバーになると。地方6団体が入る。

石井 道州の問題だから都道府県だけではなく、市町村も議会も関係してくる。6団体は入らないといけないと思う。

尾形 渡辺担当相は、第一回の会合で市町村の代表も入れると言いました。

石井 我々知事会としても、それを望みたいと思う。

尾形 ところで、政党のレベルでは自民党に調査会があり、夏の参院選をにらんで5月ごろまでに報告書をまとめる予定です。この動きは気になりませんか。

石井 自民党の論議は大いに関係してくると思う。自民党の調査会の議論が、五つの小委員会も併せてピッチをあげて検討をスタートさせている。参院選をにらんでの議論の展開となると、私たち地方の意見もその中に反映させてもらわなければいけない。
 是非とも我々とも意見のすり合わせをする場をお願いしたい。調査会がどこまでのものをつくるかにもよるが、これは急がないと(手遅れになる)。

尾形 5月はもうすぐです。自民党は道州制をマニフェストに入れる考えです。

石井 私たちがまとめた道州制の「基本的考え方」の最後の方に書いているこれからの検討項目はたくさんある。それらについて調査会がどこまでまとめるのか非常に気になる。

尾形 地方団体が知らぬ間に、妙なレールを敷かれていたり、方向付けをされると困りますね。

石井 そこは、私も一番気にしている。私は杉浦調査会長に会って是非、地方の意見を反映してくれと頼んだ。杉浦さんも我々の意見を聞きたいと言っていたので、当然、意見のすり合わせが行われると思っているが、一層、党側と連携を深めたい。

▽知事会内の意見の違いは克服した

尾形 ところで、道州制」には経済界が積極的です。日本経団連は「御手洗ビジョン」を策定、各地の経済団体による道州制協議会も設置されています。御手洗ビジョンは、2015年の道州制移行を提言しています。知事会も国と地方の協議の場を早く設置できるよう、もうちょっとピッチを上げて行動しないと置いてきぼりになりませんか。

石井 地方側としては、そこが一番懸念されるところだ。経済活動には垣根がないから経済界が道州制に積極的になるのは当然だ。
 問題は、政府と与党の議論の進み具合に我々地方側が待ちの姿勢でいたのでは、地方の意見は反映されるどころか、置いて行かれてしまう。そういう面では、少し知事会の中における議論は、ピッチを上げなければいけない、スピードアップをしようと皆で確認した。

尾形 ところで、知事会は「基本的考え方」で一応まとまったのですが、道州制導入について積極派と慎重派が分かれていて、根っこの部分では一枚岩ではないという話もある。慎重派は理念派というか、積極派は現実派というのか、意見にはそれぞれにプラス、マイナスがあります。そのプラスとマイナスを噛み合わせながら、知事会の中の議論を進めていかざるを得ない。
 議論百出も結構ですが、国と対抗するには組織のリーダーシップが必要になります。議論をまとめる力が求められます。

石井 まさに知事会として鼎の軽重が問われているんだと思う。今までは、地方分権改革で議論し、今も第二期改革で議論が新たにスタートしたが、国からあるものを地方が奪い取っていこうということで、曲がりなりにも方向性は一致していた。しかし今度の道州制の問題は地方分権改革の総仕上げだとは言われても、自らの当事者としての判断を問われることになる。各県の置かれているさまざまな立場やこれまでの経緯もあって、道州制に温度差が出てくるのはやむを得ないと思う。
 そこで推進派は、今こそやっていかないと国の都合のいい制度設計になってしまいかねない、という立場から意見を言う。逆に慎重派は、あんまり議論についていくと巻き込まれてしまい、地方にとっていい形にならないと心配する。
 それぞれの立場は異なるが、今回まとめた基本的考え方に書いてあるような前提条件を充足するということで、我々は一致した。その時に知事会の麻生会長も、「我々が意思統一しないと、国の議論に遅れをとってしまう」と言った。
 私も特別委員会の委員長として議論をまとめたが、これでスタート台に立ったと思う。国の方の議論が今後どう進んでいくのかと、それに合わせながら、我々も慎重派の人も議論していかなければいけないと、だんだん変わってきたんではないか。
 特別委が示した案は表現を一部修正されたが、骨格は提案した内容と大きく変わることはなく、知事会の考え方としてまとめることができた。

▽首相の「本気度」が問われる

尾形 昔から国のあり方は、あまり議論の俎上に上がっていません。三位一体改革のときもそうだし、地方制度調査会でも、もっと慎重に国の役割というものを議論しないまま答申は出すべきではない、という意見もありました。国のあり方、地方のあり方が、もう一つすっきりとした形で整理されていないようです。

石井 私は地方制度調査会の委員だったので、中で議論に入っていて同じように受け止めた。なぜそうなのか。一つは地方制度調査会が与えられた権能としての制約があると思う。
 この問題は、私たちが知事会で書いたとおり、中央省庁の解体・再編、国の形そのものを決めるのは官邸サイドで議論すべき話なのだが、総務省が中心の地方制度調査会で事務局をやっているが、(議論は)総務省(の裁量)を超えている。
 中央省庁を大胆に再編しようというときに、地方自治を担当しているところだけで議論するのは無理だと思う。だから、国と道州の役割分担もメルクマールは出ているが、我々地方側からみてすうっと納得できるようなものがない。

尾形 となると、どうしても政治主導が問題になります。そのためにもトップリーダーの指導力が欠かせない。政治主導の道州制論議に持っていくためには、それが必要です。

石井 今度の問題は、一番それが求められると思う。地方分権改革そのものも、もちろん官邸の主導がないとできないが、道州制の問題は国家の形をどうするかというところから入っていかなければいけない。
 国のやる仕事は何なんだ。国は外交、防衛、通貨とかに専念してもらおうと我々は言っている。官邸に国家の戦略を練るいろいろな組織がつくられたが、ああいうところで本当は議論すべきだと思う。
 道州制担当大臣を置かれたことは、今までにないことなので、それは安倍総理のリーダーシップなのだが、大事なのはこれから安倍総理がどうこの問題を整理するか「本気度」が問われると思う。

▽官邸主導で大胆な省庁再編

尾形 道州制担当大臣が言っているように中央省庁の解体的な大変革を目指すのであれば、内閣官房にきちんとバックアップをする組織が必要になるでしょう。中央省庁再編の第2ラウンドを引っ張る「機関車」が必要です。

石井 国の地方支分部局では、圧倒的多数の国家公務員が働いている。それが地方行政と二重行政になっていて無駄がある。だから、中央省庁の再編・整備を考えるということなので、是非とも道州制を念頭に置きながら大胆な省庁の再編計画を練っていただく。これは官邸でないとできない。そうでないと、各省庁は絶対反対するに決まっている。

尾形 北海道を対象にした道州制特区推進法は、北海道知事に提案の余地は残していますが、省庁の強力な権限を侵食するものではなかった。「特区」であるなら、もっと大胆な権限移譲があるべきでした。国には何も痛みもないような、法律ができたしまった。

石川 もっと進んだ権限移譲がないといけないが、そこにあまり入り込んでいない。議論はあると思うが、苦労された高橋知事のために申し上げれば、一応、突破口、第一歩を踏み出した。これから北海道が本気になって国からの権限移譲を受けるんだ、自分たちだけでやるんだと、どれくらい本気度を示すことができるかどうかにかかっていると思う。我々は応援団として、北海道知事の応援をする。

尾形 各ブロックで道州議論が盛んです。九州の経済団体を中心とした道州論を聞いていると状況判断がちょっと違うようです。

石井 それは、本格的な道州制の論議というのとはまた違うんじゃないでしょうか。

尾形 中国・四国地方についてはどうですか。中四国を一つにするとか、別々にするとか割れているようです。

石井 中国・四国でいくのか、別々なのか、両方の議論がある。ほかの地域より比較的活発に議論が行われていると思うが、やっぱり地域的な問題がある。瀬戸内海を囲むエリアでは、比較的活発に議論はされているが、日本海側、太平洋側では、どうしても議論が低調になる。 

尾形 しかし、全国的に見ると、中国・四国地方は道州制問題に熱心だと言われている。

石井 首長の道州制に対するスタンスは別にして、問題がこれだけ大きくなっているのだから、シンポジウムとか講演会とかいろんなことをやって、今進んでいる議論を分かりやすく地域の住民の皆さんに示していかないといけないと思う。

▽住民の疑問に分かりやすい説明

尾形 国民的な論議を高めるためにも、国や自治体はいろんな仕掛けが必要になります。

石井 地方だけでやるのも意義があるが、中央省庁も加わってこれだけ検討しているんだということを言えば本気度が高まる。関西財界セミナーに出席した内閣府の政務官が取り組みを紹介したら、やっぱり盛り上がった。地方や地方の財界で議論するのも大切だが、中央省庁が動き出したということは、今までなかったし、これから議論が加速されると思う。

尾形 地方でも一般の人たちが関心を持つような、うまい方法はないですか。

石井 「私たちの地域社会がどう変化するのか」「いいことは何なのか」と地域住民の方が疑問に思うことに対して、分かりやすく説明していかなければならない。

新しい道州ができれば、産業面においても異業種が交流し今までにないような産学官連携もできる。それぞれの地域に特色のある製造業が発展するとか、新しい文化が芽生えるとか、保健医療・福祉の分野でも病院、大学の連携などで医療態勢はこうなるということを説明する。そうすると、皆に頷いていただける。
 しかし、課題もある。大きくなってくると、どうしても多くのものが州都に集中して、地域の端に存在することになることを心配する。だから、懸念されている問題をいかに分かりやすく説明できるかにかかっていると思う。生活者レベルでの分かりやすいすい説明が求められる。

尾形 黙っていても集まる経済界と違って、地域自治がどうなるかに不安を抱く一般の人たちが積極的に参加できる場があれば、国民レベルでの論議につながると思います。地域の活動家を巻き込んで議論を発展させる方法もあると思いますが。

石井 これまでは各地域でそれぞれに道州制ビジョンの議論をやっていたが、政府がビジョンをつくるということになって国の考えが分かり、日本全体で議論しだしたということが分かると、国民の関心も高まっていくのではないか。

私も、岡山市内の町内会長さん300人ほどに集まってもらってお話したが、地域のリーダーに十分分かってもらう努力もやっていこうと思っている。地域でいろいろ議論が出ると、町内会長に「道州制って何なの」と住民の方が聞く。その状況を頭に入れて、我々行政側がしっかり説明しておくということが大事だ。

尾形 全国知事会の各知事も地元で道州制問題の世論を喚起することが必要です。

石井 これだけ取り組みが始まったのだから、やっぱりそれを住民のみなさんに知らせて情報提供する、それが首長の責務だと思う。

                                             (2007年 春季号)